第三章 エリュシオンの織姫
第5話 促された覚醒
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るならば――その人もまた、ライダーが守るべき「人間」の一人なのだから。
◆
――2016年12月10日。
東京都稲城市山中。
アジトの壁を突き破り、アメノカガミノフネが飛び出した先には――夜景が広がる山道が待っていた。
道無き道と林を超えた果てに辿り着いた、無数の輝き。大都会が創り出すその光の群れに、サダトは思わず目を細める。
(ここは……東京の稲城市! 施設のすぐそこか!)
その景色から拾い上げた情報を頼りに、サダトは現在位置を素早く特定し――焦燥を露わに車を走らせる。
アジトと施設がここまで近いなら、とうに風田改造被験者保護施設も破壊されているかも知れない。あの男がアジトを出払ったタイミングはわからないが、すでにあの重戦車が動き始めている可能性は十分に考えられた。
サダトは頭の中にある地理情報をフル活用し、風田改造被験者保護施設に続く最短距離を走る。道路交通法にはそぐわない走りだが、人命には代えられない。
「……ッ!?」
そして、木々の隙間を縫って道無き道を駆け抜け、施設に繋がる山中の一本道に出た瞬間――サダトの眼前を、眩い輝きが襲った。
舗装された一本の広い道路。並木に囲まれたその道の向こうには――道路そのものを封鎖するかのように、数台のパトカーが横並びになっていた。
警察が、風田改造被験者保護施設への道を完全に封じていたのだ。
(警察!? 警察まで施設に集まってたのか! くそっ、こんな時に……!)
彼らは林を突き抜け、あり得ない方向から道路上に飛び込んできたアメノカガミノフネに猛烈なフラッシュを当てている。
その光を腕で隠しながら、サダトは自分の浅はかさを悔いた。
――渡改造被験者保護施設が壊滅したなら、警察も次の狙いに予測を立てて網を張っているはず。
そんな当たり前のことすら見落とすほど、サダトは焦っていたのだ。重戦車の行方を辿ることと、風田改造被験者保護施設の安否だけに思考を奪われていた。
(とにかく、一旦逃げて体勢を立て直すしかない! 警察と……「人間」とことを構えるのだけは御免だ!)
この封鎖された道路の向こうにある、施設が無事がどうかはわからない。だが、このまま無理に押し入れば大なり小なり、生身の人間を傷付けることになる。
今はただ、退くしかない。
サダトはハンドルを切り、反対方向に急速旋回する。そして全力でこの場を離れるべく、アクセルを踏み込――
「サダト様ぁあっ!」
「……!?」
――む、瞬間。
決して忘れられない少女の呼び声が、その足を止めた。
幻聴か。罠か。
そんな可能性がある、と危惧しつつも。サダトは思わず、振り返ってしまう。
「……ア、ウラ…
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