第三章 エリュシオンの織姫
第2話 仮面ライダーの死
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』は、あなたが思うほど脆弱ではない。生きる力は、愛は。あなたの理想には屈しない」
仮面を脱ぎ、空の向こうを見つめる青年。戦士としての殻を捨てた彼は、その想いを故郷で戦う後輩に託していた。
「あの子が、きっと。それを教えてくれる」
◆
――2016年12月5日。
東京都目黒区渡改造被験者保護施設跡。
全てが終わったこの街――否、廃墟には。生者は独りしか残されていない。
ただ独り、生きてこの地に立っているその男は、ハッチを開けて重戦車から降りると、辺りをゆっくりと見渡していた。
悲鳴すら絶え果てた無音の廃墟。ゴーストタウンと化した、目黒区の市街地は閑散としている。
逃げ出していく警官隊に見捨てられ、それでも懸命に生き抜こうとあらがっていた市民は、皆一様に力尽き亡骸と成り果てていた。炎上を続けるパトカーや路上に横たわる死体の山が、この場で起きた惨劇のほどを如実に物語っている。
――その災厄の手は、警官隊や仮面ライダーが身を挺して守ろうとしていた、改造被験者保護施設にまで及んでいた。
半人半獣の身でありながら、それでも明日を夢見て人間としての生を追い続けていた、被験者達。彼らの骸は燃え盛る施設に焼かれ、無惨に爛れている。
元隊員だろうと、誘拐されただけの民間人だろうと、関係ない。女子供も構わず焼き払われ、全てが蹂躙され尽くしていた。
「まずは一つ。残るは稲城市の風田改造被験者保護施設――か」
静寂に包まれた廃墟の中。白髪の男の呟きは、この場に強く響き渡る。
彼はゆっくりと歩み始めると、自分が乗り込んでいた重戦車の正面に立ち――感心するような色を僅かに表情に滲ませ、車体に突き刺さる白刃の剣を見つめた。
「……大したものだ。俺のタイガーサイクロン号にここまで傷を付けたのは、No.5を除けばお前が初めてだ」
そう呟く彼が、振り返る先には――血だるまになり横たわる、仮面ライダーAP。
だった「何か」が眠っている。
手足はもがれダルマのようになり、腹には風穴が開いていた。血に濡れ、ひしゃげた外骨格は、もはや原型をとどめていない。
「だが、それまでだ。脆弱な『APソルジャー』の性能では、ここまでが限界。如何に訓練を積んだとて、これ以上は――俺を屠るほどには、強くなれん」
瓦礫の上を歩む男は、足元に転がるサダトの腕を蹴り飛ばし。横たわるダルマの傍らに立つ。
「お前には、俺の理想の礎になってもらわねばならん。……用があるのは、その脆弱な体ではなく」
そして片手で頭を鷲掴みにして、100kg以上ある外骨格の胴体ごと持ち上げると。ぶらがった胴体と頭を繋ぐ首に――抉り込むような肘鉄を放った。
直後。
男の肘に削り取られた
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