暁 〜小説投稿サイト〜
仮面ライダーAP
第三章 エリュシオンの織姫
第2話 仮面ライダーの死
[6/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
していた重戦車――タイガーサイクロン号を再起動させる。金属同士が軋み、こすれ合う歪な音と共に、鋼鉄の災厄が再び動き始めた。

『仮面ライダーAP。まずはお前を、その脆弱な肉体から解放してやる』
「……ッ!」

 スピーカーから響くノイズ混じりの声と同時に、主砲が施設の方に向けられる。すでに、砲弾は装填されているようだ。

 剣が届く間合いではないが――射撃できる形態(フォーム)に切り替えている猶予はない。そう判断した瞬間、サダトは施設を庇うように主砲の正面に立つと、ベルトのワインボトルを強く押し込み、エネルギーを右腕へ集中させていく。
 その力の奔流はやがて赤い電光となり、彼の右手に握られた剣に宿った。

『FINISHER! EVIL AND JUSTICE OF MARRIAGE!』
「スワリングッ――ライダァッ、ビィィィトッ!」

 そして。あらゆるものを切り裂く、必殺の電光剣を逆手に構え。
 一気に振り抜くように――重戦車目掛けて投げつけるのだった。

 真紅の矢と化した、電光の剣がタイガーサイクロン号に肉迫する。

 その直後。

 全てを破壊する重戦車の主砲が、火を吹いた。それはまるで、裏切り者に裁きを下すかのように。

 ◆

 ――2016年12月5日。
 某国某戦地。

 草一つ生えない不毛の荒野。その荒れ果てた地の上では、血で血を洗う争いが日常となっていた。
 何のために戦っているのか。誰のための戦いか。誰も何もわからないまま、それでもこの一瞬を生きるために。
 戦場に立たされた若者達は、今この瞬間も銃を手に戦っている。

 ――そんな、この地上を探せばどこにでもあるありふれた戦場の渦中。漆黒の外骨格を纏う仮面の戦士が、一振りの剣を携え戦地となった街を歩いていた。
 砂と廃墟と死体しかない、ゴーストタウン。その中を歩む彼は、「G」の形を持つ柄を握り締め、晴天の空を仰ぐ。

 ここではない、遠く離れた故郷を見つめるように。

「……」

 その刃には。

 彼が長年追い続けた宿敵の、血潮が染み付いていた。

 彼の戦いは、幕を下ろしたのだろう。「元」を絶った今、これ以上新たな怪人が生み出されることはない。

 だが。
 全てが終わったわけではない。

 終戦協定が結ばれても、それを知らない兵隊が戦い続けているように。今も、この戦地で若者達が戦い続けているように。

 戦火の残り火が、今も戦士の故郷を蝕んでいる。地獄の業火と成り果てて。

 しかし、仮面の戦士にできるのはここまで。手の内を知り尽くされている「師匠」を、討つ術は彼にはない。
 だからこそ「師匠」は、己の介錯を「孫弟子」に託したのだ。

「……羽柴(はしば)さん。『人間
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ