第三章 エリュシオンの織姫
第2話 仮面ライダーの死
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していた重戦車――タイガーサイクロン号を再起動させる。金属同士が軋み、こすれ合う歪な音と共に、鋼鉄の災厄が再び動き始めた。
『仮面ライダーAP。まずはお前を、その脆弱な肉体から解放してやる』
「……ッ!」
スピーカーから響くノイズ混じりの声と同時に、主砲が施設の方に向けられる。すでに、砲弾は装填されているようだ。
剣が届く間合いではないが――射撃できる形態に切り替えている猶予はない。そう判断した瞬間、サダトは施設を庇うように主砲の正面に立つと、ベルトのワインボトルを強く押し込み、エネルギーを右腕へ集中させていく。
その力の奔流はやがて赤い電光となり、彼の右手に握られた剣に宿った。
『FINISHER! EVIL AND JUSTICE OF MARRIAGE!』
「スワリングッ――ライダァッ、ビィィィトッ!」
そして。あらゆるものを切り裂く、必殺の電光剣を逆手に構え。
一気に振り抜くように――重戦車目掛けて投げつけるのだった。
真紅の矢と化した、電光の剣がタイガーサイクロン号に肉迫する。
その直後。
全てを破壊する重戦車の主砲が、火を吹いた。それはまるで、裏切り者に裁きを下すかのように。
◆
――2016年12月5日。
某国某戦地。
草一つ生えない不毛の荒野。その荒れ果てた地の上では、血で血を洗う争いが日常となっていた。
何のために戦っているのか。誰のための戦いか。誰も何もわからないまま、それでもこの一瞬を生きるために。
戦場に立たされた若者達は、今この瞬間も銃を手に戦っている。
――そんな、この地上を探せばどこにでもあるありふれた戦場の渦中。漆黒の外骨格を纏う仮面の戦士が、一振りの剣を携え戦地となった街を歩いていた。
砂と廃墟と死体しかない、ゴーストタウン。その中を歩む彼は、「G」の形を持つ柄を握り締め、晴天の空を仰ぐ。
ここではない、遠く離れた故郷を見つめるように。
「……」
その刃には。
彼が長年追い続けた宿敵の、血潮が染み付いていた。
彼の戦いは、幕を下ろしたのだろう。「元」を絶った今、これ以上新たな怪人が生み出されることはない。
だが。
全てが終わったわけではない。
終戦協定が結ばれても、それを知らない兵隊が戦い続けているように。今も、この戦地で若者達が戦い続けているように。
戦火の残り火が、今も戦士の故郷を蝕んでいる。地獄の業火と成り果てて。
しかし、仮面の戦士にできるのはここまで。手の内を知り尽くされている「師匠」を、討つ術は彼にはない。
だからこそ「師匠」は、己の介錯を「孫弟子」に託したのだ。
「……羽柴さん。『人間
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