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仮面ライダーAP
第三章 エリュシオンの織姫
第2話 仮面ライダーの死
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かろう」

 施設で暮らしている被験者の中には、元シェード隊員ではない民間人の被害者も大勢いる。そんな、何の罪もない人間までも弱卒と切り捨てる男の姿勢に、サダトはさらに声を荒げた。

「……この施設の人達は。貴様らに人間の尊厳を奪われながら、それでもなお『人間』として生きようとしている。貴様らは、そうやって自分の了見だけで、今も生きている人達の命まで奪うのか!」
「俺は単なる道楽で殺しているわけではない。弱卒共の頭が減れば、それだけ連中に割く予算が削減される。さすれば、真に強く正しい者達が然るべき恩恵を享受できるのだ」
「詭弁を……」
「お前にとってはそうであろうな。だが、日本政府はその『詭弁』を選んだらしい。――見ろ」
「……!?」

 だが、その横暴にどれほどサダトが怒ろうと、彼は怯む気配もなく話を続けていく。やがて彼が指差した先に視線を移し――サダトは、硬直してしまった。

 生き延びたパトカーの運転手や、移動手段を失った警官隊が、うめき声を上げて助けを求めている市民を放置し、我先にとここから離れている。そんな光景が、四方八方から窺えた。
 一時撤退からの立て直しにしては、妙だ。彼らが逃げ始めてから数分が経つのに、増援のサイレン音は全く聞こえてこない。

「……もしここが、普通の病院なら。警察署前なら。議事堂前なら。連中も敵わないなりに、あと数時間は粘っていただろうな。……政府にとっても結局のところ、被験者達は邪魔者に過ぎんということだ」
「……!」
「警察も政府の意向を汲んだ上で、撤退命令を出している。生きていたところで、この先役に立つ望みが薄い被験者100人の命より、警官一人の命の方が『重い』のだ」
「……そ、れは……」
「実利主義への傾倒。弱肉強食の肯定。悪くない判断だ。表立って被験者を排除すれば世論や国際社会から誹りを受けるが、シェードのテロで排除された――となれば、待っているのは『同情』。国の癌を切除できる上に融資も期待できるのだ、まさに一石二鳥だろう」
「そんな……!」
「シェードの改造人間に通常兵器は通じず、警官隊は敗走を繰り返してきた。今回も、力を尽くしたが及ばなかった――とされるだろう。この場にいる人間がこれから皆殺しになる以上、市民を捨てて逃げ出したという証拠も証言も――何一つ残らん」

 まさにこれから、全員を殺すと宣言する白髪の男。その発言を聞かされた瞬間、サダトの全身から突き上げるような憤怒と殺気が迸る。

「させると思うのか……俺が!」
「……加えて。頼みの綱のお前(仮面ライダー)も敗れたとあっては、誰も警官隊を責められまい。それほどの圧倒的な理不尽さが、この『タイガーサイクロン号』の威力なのだから」

 その発言を最後に。

 男はハッチの下へと潜り込むと、沈黙
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