第三章 エリュシオンの織姫
第2話 仮面ライダーの死
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た後。残された最後にして最大の刺客――白塗りの重戦車から、くぐもった声が響き渡った。
ノイズが混じるスピーカー音が、死屍累々と骸が転がる戦場に鳴り響く。――すると。
「……だが。今のお前では、その背に守られている弱卒と大差ない。その脆弱な改造ボディでは到底、改造人間の真の価値は証明出来んだろう」
「さっきから……何を言ってる」
戦車上部のハッチが開かれ、そこから一人の初老の男が現れた。
白髪のオールバック。皺が寄った顔でありつつも、精悍さを失っていない面持ち。漆黒のトレンチコートを内側から押し上げる、はち切れんばかりの筋肉。
顔立ちから高齢であることは窺えるが、その長身の体躯は老境という言葉からは程遠い分厚さとなっていた。並の軍人では、こうはいかない。……いや、生身の人間ではこうはいかない。
ハッチから乗り出してきたこの男がシェードの改造人間であることは、誰の目にも明らかだ。
今まで戦ってきたシェードの刺客とは、全く雰囲気が違う異質な男。その得体の知れないオーラに反応し、サダトは素早く剣を構える。
一方、切っ先を向けられている男は涼しい面持ちで、サダトの方をハッチから見下ろしていた。
「貴様は一体、何のためにこんなことを……!」
「――いいだろう、お前には知る権利がある。俺の目的は、ごくありふれた単純なことだ。改造人間の『兵器』としての『商品価値』を証明し、この国に改造人間の必要性を説くこと。ひいては、その過程を以て日本という国を富国強兵へと誘うことにある」
「……!?」
「仮面ライダーAP。お前は、政府に飼われたこの被験者達をどう見る。俺達と変わらない、人間を越えた力を手にしていながらその力を活かす義務を放棄し、あろうことか国の金を食い潰し利権だけを貪っている」
「……」
「大いなる力には、大いなる責任が伴う。だが、改造被験者保護施設で暮らす弱卒共に責任の二文字はない。俺の目的はそういった毒にも薬にもならない者達を排斥し、限りある国家予算を効率的に削減することにある」
老境の男は表情一つ変えないまま、淡々と己の目的を語る。施設で暮らす改造被験者を「弱卒」と言い切る彼の眼を見据え、サダトは拳を震わせた。
「……力には、責任が伴う。それは、わかる。けど……俺達は、貴様らに力をくれと乞うた覚えはないッ!」
「誰しも『望んで』力を得ることはない。子が親を選べないように、己も己の力を選ぶことはできない。我々は常に、持って生まれた才能や実力で生きていくことを、この世界から強いられている。お前達が望んだか否かなど、何の意味もない話だ」
「なんだと……!」
「お前は改造人間として優れた適性を持っていた。施設で飼い慣らされている弱卒共にはそれがなかった。その違いに、『望み』の有無は関係な
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