第三章 エリュシオンの織姫
第2話 仮面ライダーの死
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ら響き渡る軽快な電子音声。それに呼応するように叫ぶ黒髪の青年は、ベルトのレバーを倒してワインボトル――の形を持つ「エンジン」を起動させる。
刹那。青年の全身は漆黒の外骨格に覆われ、全身にワインボトルから迸る赤いエネルギーラインが循環していく。
金色の複眼を囲う「a」の意匠。胸に装着された「p」を象るプロテクター。その外見的特徴が、彼の実態を物語っていた。
そして――風にたなびく白マフラーが、「歴戦のヒーロー」を彷彿とさせている。さらにマスクや外骨格は、長い戦いによる傷跡を色濃く残しており……装甲が破損している首元や後頭部からは、変身後であるにも拘らず、生身の肌や黒髪が僅かに覗いていた。
『AP! DIGESTIF IN THE DREAM!!』
変身シークエンスの終了を告げる、電子音声。鳴り響くその声と共に、青年こと南雲サダトは「仮面ライダーAP」として、地獄と化した目黒区の戦場に現れたのだった。
「か……仮面ライダーだ!」
「初めて見た……! お、おい俺達も一旦引くぞ! 巻き込まれたら今度こそ終わりだ!」
時代錯誤の車に乗り、颯爽と駆けつけてきた仮面の戦士。その姿を視界に捉えた警官隊は、これから施設の門前で始まる激戦を予感し、蜘蛛の子を散らすように退散していく。
仮面ライダーAP――サダトは素早くアメノカガミノフネから飛び降りると、赤い「P」の字を模した柄から刃を伸ばす一振りの剣を手に、白マフラーを翻して怪人達に斬り掛かって行く。
「――とあッ!」
問答無用の速攻は、怪人達から伸びる触手よりも速く。しなる肉の鞭を裂く剣閃は、瞬く間に怪人の肉体に届いて行った。
それはさながら、患者の体にメスを入れるかのように。
肉も骨も、紙のように断ち切る剣が肉体を通り過ぎた後は――噴き上がる血飛沫が、その結末を告げていた。
「……ッ!」
同胞の死を見せつけられた怪人達が、奇声を上げて次々と躍り掛かる。矢継ぎ早に舞い飛ぶ鞭の連撃が、仮面の戦士に降り注いだ。
しかし、金色の複眼――の奥の瞳に、迷いの色はない。
一撃目の鞭を切り裂いた直後。
手首を返して逆手に剣を構え、死角を狙う二撃目の鞭を斬る。その隙を突いて左手に巻きついた触手を掴み返し、触手の「持ち主」を力技で手繰り寄せ――頭から叩き斬る。
自分の肉体の一部を斬られた二体は痛みにのたうち、脳天から両断された一体は苦しむ暇もなく絶命した。
そのまま流れるような剣捌きで、サダトは残る二体を斬り伏せてしまう。まるで、苦しみから解き放つ「介錯」のように。
『三体のフィロキセラを無傷で――か。その脆弱な体にしては、上々な戦果だ』
「……!」
そうしてサダトの剣によりフィロキセラ怪人が全滅し
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