第三章 エリュシオンの織姫
第1話 聖女の偽善
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それは即ち、多数の被験者を使わずとも強力な改造人間の研究開発を行えることを意味する。
すでにシェードのテロにより改造人間の兵器としての商品価値は証明されている。通常兵器をものともしない機械歩兵をリスクなしに大量生産できる力を、強欲な地球人が放っておくはずはないのだ。
だがアウラも、秘術を除けばただの少女というわけではない。彼女は外見こそ華奢だが、「銀河連邦警察」に所属する「宇宙刑事」の一人でもある。
偉大な先輩「ギャバン」「シャリバン」「シャイダー」のようなコンバットスーツこそ持ち合わせてはいないが、それでも並大抵の人間に容易くどうこうされる女ではない。
自身を捕らえようと近づく世界各国の工作員をかわしながら、彼女はあくまで被験者救済の旅を続行していた。
しかし。それを受け、世界各国はさらに狡猾な手段に出る。
彼らは自分達の科学力がシェードに及ばないものと知りながら、「シェードに対抗すべく設立した特殊部隊」を標榜し、秘密裏に改造人間部隊の編成を始めたのである。
当然ながら、その結果生まれるのはシェード以下の科学力で作り出された劣悪な改造人間。兵器としても不良品な上に人間でもない、というシェードの被害者よりも悲惨な状況が続出する事態となっていた。
だが。そうなることは、誰もがやる前からわかっていた。
改造人間部隊の編成など、そんな悲惨な状況に巻き込まれた被験者への同情を誘い、アウラの身柄を自国の領地におびき寄せるための布石でしかない。
彼らはアウラを手に入れるために、国の為だと信じる自国の民すら玩具にし始めたのだ。
あまりに残酷にして、歪な地球人の所業。その企みに気づいたアウラは、シェード以上に腐り果てた地球人達に絶望し、己の力を呪うようになってしまった。
改造人間を救う為だけに来たはずの自分が、さらなる悲劇の種を振りまいていた。彼らによって生み出された被験者の嘆きが、彼女の心を暗黒に突き落としたのだ。
――インターポール捜査官のロビン・アーヴィングが現れたのは、その頃のことだった。
彼はアウラを匿うとフランスの本部まで護送し、彼女の身柄をICPOの保護下に置くことに成功する。
国際的な警察機構の中枢に匿ってしまえば、各国政府も容易く干渉はできない。アウラの存在は公には認められていないのだから、引渡しの要求など出来るはずもないのだ。
ロビンの任務はこうしたアウラの保護だけでなく、各国政府の策略により生まれた劣悪な改造人間プラントの摘発も含まれていた。
イリーガルな手段で造られた改造人間の生産工場。その全てを滅ぼすため、彼は世界中を飛び回り工作員を相手に戦い続けてきたのである。
――そうして、彼を含むICPOがアウラを保護する方針を取ったのは、彼女が未
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