第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
第19話 生きるべき世界
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ったからこそ、せめて父の胸の中で逝きたいと願っているのかも知れない。そんな考えが脳裏を過る中。サダトは己の迷いを断ち切るように、腕の7.7mm機銃の銃口を向ける。
「……もういい。もう、いいんだ」
そして、ベルトのボトルを強く押し込み。ベルトから伸びる黄色のエネルギーを、上半身を通して両腕に充填させて行く。
その力の奔流が金色の光となり、機銃の銃口に現れていた。
『FINISHER! VOLLEY MACHINE GUN!』
「スワリング――ライダーシューティングッ!」
やがて。
銃口から濁流のように放たれる銃弾の群れが、アグレッサーの全身を抉っていく。蜂の巣を、作るかのように。
『トウサ……ン。イッショ、ズット……ズット、イッショニ……』
命の炎を燃やし尽くし、力尽きて沈んでいく巨人の骸。それが完全に視界から消え去る瞬間まで。サダトの銃口からは、連射が続けられていた。
――この世界には。割戸神親子の居場所など、なかった。自分の世界を捨てたところで、新しい世界に安住の地を見つけることはできないのかも知れない。
ならば自分は、帰らねばならない。戦うべき悪がいる、守るべき人がいる、あの世界へ。例え、そこに安住の地などないのだとしても。
「……」
爆炎と残骸だけを残し、あらゆるものを消し去ってきた仮面ライダーアグレッサー。その暴威が去った今でも、歓喜の声は上がっていない。
ただ、「終わった」という安堵感だけが、今の彼女達を癒し続けている。その一人である比叡は、じっとサダトの横顔を見守っていた。
(……これでもう、死者が振り回されることもない。45年も掛かったけど。汰郎さんはようやく、「眠る」ことができるんだ)
痛ましい巨大な焼死体として、海中に没して行くアグレッサー……もとい、割戸神汰郎。その魂は、果たして故郷に還るのか。この海に、留まるのか。
それを問うても答えはない。それでもサダトは、ただひたすらに――45年に渡り翻弄されてきた少年の思念に、安らぎが訪れることを願うのだった。
「……お休みなさい」
そして、最後にそう呟いて。
変身を解いたサダトは、安心感から腰を抜かしていた比叡に、穏やかな面持ちで手を伸ばす。
「……さ、帰ろう。俺達は、まだちゃんと『生きてる』んだから」
「……うん……!」
その手を取り、はにかむ比叡の表情は。憑き物が落ちたかのように、晴れやかな色となっていた。そんな二人を金剛を含む共に戦った艦娘達は、ニヤニヤと厭らしく笑いながら見守っている。
『――終わったな。現時刻1345を以
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