第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
第14話 一航戦の試練
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サダトの背に群がって行く。だが、彼はそこから動く気配を見せない。
「南雲君っ!?」
機銃掃射が終わり、零戦が通り過ぎて行くまで。サダトはそこから微動だにせず、立ち尽くしていた。
――それが、この試練を締めくくる最後の攻撃となる。
『10分経過……終了! 試練終了です! やりました、とうとうやってしまいました南雲サダト! 一航戦の雷撃、爆撃、銃撃を凌ぎ、10分生き延びてしまいましたぁぁあ!』
そして、制限時間の終了を霧島が告げた時。爆発するような歓声が、この一帯に響き渡る。
番狂わせに次ぐ番狂わせ。その積み重ねが、彼女達の興奮をこれほどまでに煽っていたのだ。
一航戦のトップエース二人を相手に、ここまで持ち堪える戦いなど、今までになかったのだから。
もはや彼女達の中に、南雲サダトの実力と誠意を疑う者はいない。彼の本質は、一航戦の手により証明された。
今はただ、惜しみない拍手が送られている。
「南雲君……!」
「比叡。迎えに行ってあげるデース。多分、アレは相当疲れてるネ。……今なら、それくらいは出来るネー?」
「……はいっ! お姉様っ!」
その中で、比叡は華のような笑顔を咲かせていた。そんな妹を温かく見守る金剛は、微笑と共に妹の背中を押して行く。
その勢いのまま、次女はサダトが向かう桟橋に駆け出して行った。
「……南雲サダト。最後の銃撃……なぜ背中で受けたのですか? あなたなら消耗した状態でも、剣で防げたはず」
一方。ギャラリーの歓声を浴びながら、訓練場を後にしようとしていたサダトの背に、加賀の一声が掛けられていた。
サダトはその言葉に、半壊した仮面の奥から微笑を覗かせ――振り返る。
「……!」
「怪我させたら、いけない――て思ったんです」
振り返った彼の腕には、何人かの小人が抱かれていた。先ほどサダトが斬り落とした零戦に乗っていた「妖精さん」である。
彼は零戦を落としながら、その操縦をしていた妖精さん達を保護していたのだ。最後の銃撃を背で受けていたのも、彼女達を庇うことに専念していたためだった。
もし彼が零戦を撃墜したまま妖精さん達を放っていれば、彼女達は小さい体で泳いで桟橋まで帰る羽目になる。剣で防御しようと向き直っていれば、銃撃が彼女達に向かう恐れもあった。
――その行為に、加賀は普段の無表情を崩し、呆気にとられた顔になる。そんな相棒の珍しい姿に、赤城はくすくすと笑っていた。
「南雲サダトさん。あなたは本当に、面白い人なのですね」
「……よく言われます」
そんな赤城の褒め言葉を、からかいと解釈したのか。サダトは頬を赤らめると、そそくさと妖精さん達を抱えたまま桟橋に向かっていく。
その背中を、二人は穏やかに見守って
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