第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
第11話 滲む不信
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られたのは僥倖だ」
「あの南雲っていうボーイ、中々いい眼をしてたネー。ちょっとやそっとの死線じゃ、ああいう眼にはならないデス」
「でも、信じていいんでしょうか……。もしかしたら、私達にそう思わせるための罠じゃ……」
「疑い出せばキリがないぞ、比叡。……彼の言動全てが信じるに足るかは、まだわからん。だが少なくとも、私達では到底知り得ない情報を持ってきた。今は、それで十分だ」
南雲サダトが持ち込んできた、巨大飛蝗に纏わる資料。その解析結果が出れば、何らかの打開策が見えてくるかも知れない。
それに、あの怪物と同じ改造人間であるという彼ならば、巨大飛蝗との交戦における戦力にもなりうる。
巨大飛蝗が人肉を喰らい成長する生命体であると判明した今、あの怪物を放っておく選択肢は完全に消え去っている。深海棲艦すらも捕食するならば、いずれ艦娘も、その後ろで守られている人類も餌食となるだろう。
専門外だからと黙って食われるなど、艦娘としても生物としても間違っている。その未来を変えるためならば、異世界から来た協力者だろうと改造人間だろうと、利用し尽くすのみ。
それが、この件に対する長門の決断だった。
「提督には私から話しておく。金剛、比叡。お前達は明日、他の艦娘達に事情を説明しておけ」
「了解デース!」
「りょ、了解しました」
上官であり、戦友である長門からの命を受け、金剛は朗らかな笑みとともに親指を立てる。それから一拍遅れて、比叡も敬礼で応えた。
だが、サダトを視線で追うように、扉を見つめる彼女の瞳には翳りが窺えた。歴戦の戦艦は、その微細な影を見逃さない。
「……」
「彼は信用ならないか? 比叡」
「えっ!? あ、いえ、別にそんな……」
「取り繕う必要はない。お前のように疑いを持って、当然の案件だ。私もまだ信じ切ってはいないしな」
「そ、それは……」
「お前に見る目がない、とは言わん。彼が本物なら、遠からずお前から……そして私達から、信頼を勝ち取るだろう」
「比叡は心配性ネー。大丈夫デース、提督をロックオンしたこのお姉様の眼を信じナサーイ!」
そんな彼女の胸中を汲み、長門はふっと口元を緩める。一方、長女は豪快な笑顔と共に妹の肩を叩いていた。
◆
やがて、深夜の執務室は長門と陸奥の二人だけとなっていた。この日の業務を全て終えた提督代理は、椅子から立ち上がると窓に目線を向ける。
ほとんどの施設や宿舎が消灯されている中、一つだけ灯りを放っている工厰。闇夜の中で一際目に付くその場所を、長門は暫し見つめていた。
「……陸奥。南雲殿が持ち込んできた『マシンアペリティファー』の解析結果は出ているか?」
「ええ。夕張からの報告書なら預かってるわ」
「大まかな概要は聞いてい
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