第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
第7話 広がる災厄
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ンスが流れ込む。その内容に乗客達は騒然となり――弓道部員達にも緊張が走った。
「中部国際空港……? 妙ね。羽田に降りられないとしても、すぐ近くに成田空港もあるはず。どうしてわざわざ、そんな遠くまで……」
「せ、先輩! あれ!」
「……!?」
そんな中、比較的冷静に事態を観察していた部長は、黒のポニーテールを揺らして逡巡する。その時、エースが突如大声を上げた。
緑色のツインテールを振り乱し、動揺の色を声に滲ませる彼女。どんな土壇場でも大胆不敵に的を射抜いてきた普段の彼女からは、想像もつかないほどの狼狽えようだった。
そんなエースの姿に、部員のみならず部長までも目を剥く。どんな時でも気丈さを忘れなかった彼女らしからぬ姿に、ただならぬ異常性を感じたのだ。
「キャアアアァア!」
「な、なによあれ……! どうなってるのよ!」
さらに、エースと同じ光景を窓から見つけた他の乗客達にも衝撃と焦燥が迸る。ざわめきを広めているその「光景」を確かめるべく、部長は身を乗り出して窓を覗く。
――そして。
あるはずのない水嵩が、羽田空港を侵食している「光景」を、目撃するのだった。
「な……!」
「羽田が……冠水、してる……」
色鮮やかなライトアップに彩られた、東京の夜景が待っているはずだった。羽田に降りたら、派手に打ち上げてこの合宿を締めくくるはずだった。
しかし羽田の滑走路は水浸しになり、何機かの旅客機は海上に浮かされ、沖合いへと流されている。その向こうに広がる都市からはあるはずの輝きが失われており、代わりにライトを照らしたヘリが群れを成して飛び交っていた。
到底、円満に解散できる状況ではない。それどころか、無事に着陸できるかも危うい。果たして、中部国際空港まで燃料が持つだろうか。
「成田空港に降りられないのは、これが理由……なのね。確かにこの状況じゃあ、成田も……」
「ちょ、ちょっと先輩! 冷静に分析してる場合!?」
「こんな時だからこそ、迂闊に騒いで二次災害が起こることを避けるべきよ。ただでさえ、機体が瀬戸際なのかも知れないのだから」
「せ、先輩……」
「さぁ、あなたも狼狽えてる暇があるなら早く周りの乗客達を宥めなさい。スチュワーデスだけに任せていては駄目」
「わ、わかってるわよ……それくらい」
「いい? 時期部長なら、少々のことで動じてはならないわ。部員はみんな、あなたを見ているのだから」
「……こんなの全然『少々』じゃないわよ、ばか……」
こんな異常窮まりない状況でも、冷静さを失わず部員達を騒動から守ることを心掛けている。そんな部長の頼もしい姿に、エースは思わず頬を赤らめるのだった。
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