第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
第7話 広がる災厄
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る事故が発生しました。近隣の地域にお住まいの方々は避難を――』
『――臨時ニュースをお知らせします。現在水害発生中の小河内ダムにて、巨大な飛蝗のような怪物が現れたという通報がありました。警視庁、及び防衛省はシェードとの関連性を考慮し迅速に対応を行うと発表し、近隣の住民への避難が――』
◆
――2016年8月24日。
東京都大田区東京国際空港。
「羽田空港」の通称で広く知られる、日本を代表する空港の一つである。夜の帳が下りていたこの当時、ライトアップされた滑走路には231便の旅客機が着陸する予定だ。
……そして同機にはこの時。ある高校生の一団が搭乗していた。
「先輩って、ほんと愛想悪いですよねー。だから彼氏いたことないんでしょ」
「……彼氏がいないのは、あなたも同じでしょう」
「んなっ! わ、私はただ、好きな人が出来たら自分から告白するって決めてるだけで――って、うるさいうるさいっ!」
「……うるさいのはあなたよ」
ある高校の女子弓道部。その夏合宿の帰りである彼女達の最前列の席で、隣り合わせに座っている二人の部員が小競り合いを続けていた。
冷静沈着で人望の厚い部長と、次期部長でありながら血気盛んで、先輩との衝突が絶えない部のエース。そんな二人の舌戦に、後方座席の部員達は顔を見合わせて苦笑いを浮かべている。
艶やかな黒髪をポニーテールに纏めた美女は、緑色のツインテールを揺らして憤慨する後輩を冷めた目で見遣る。だが、一見すれば冷徹に見えるその眼差しの奥に、穏やかな温もりが灯っていることは後輩自身も知っていた。
ただ、それをひた隠しにする姿勢が気に食わないだけなのだ。
部長自身も、後輩が部活の後に居残り練習を夜遅くまで繰り返し、血の滲むような努力の果てにエースとなった背景を知っている。だからこそ次期部長に指名したし、その実力と人柄は誰よりも買っていた。
その裏返しである厳しい態度が、こうして当の本人からの反発を招いてもいるのだが。
それでもなんだかんだで恋バナに花を咲かせているということは、彼女達の仲を示しているようにも伺えた。
「あの二人、相変わらずよね〜……」
「せっかくあたしらが色々お膳立てしてやったのに、結局いつも通りじゃん……」
今回の夏合宿は全国大会に向けた追い込みが主目的であるが、共同生活を通じて彼女達の仲を取り持とうという部員達の試みも含まれている。
部員達の誰もが、そうして二人の和解を願っていたのだが――追い込みはともかく、そちらの方は今ひとつだったようだ。相変わらずの喧嘩ばかりな二人に、部員達も苦笑いを浮かべざるを得ない。
「だ、だいたい私だってまだ本気出してないだけだし! 先輩こそ、そんな態度で居続けてたら一生彼氏出来ずに
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