第190話 戦端を開く
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爽の提案を全て飲んだ。彼は近衛に視線を向け「橋東郡太守の遺体は防腐処理を施し身体とともに家族達の元に送り届けてやれ」と言った。近衛は橋瑁の首が包まれていた布を使い器用に包むと運んでいった。その様子を荀爽は沈痛そうな面持ちで見つめていた。
「劉車騎将軍、今日はこれで失礼させていただきます。明日の総攻撃には参加することをお許しください」
荀爽は疲労を感じさせる顔で正宗を見ると拱手して頭を下げた。その様子に正宗は罪悪感を感じているようだった。
「参加を許そう。橋東郡太守と荀侍中はともに董仲穎討伐の檄文を書き上げた仲。この戦いの結末を側で見たいと思う気持ちは十分に理解できる」
「ありがとうございます」
荀爽は正宗に感謝の言葉を口にすると頭を下げ立ち去った。彼女が去ったことを確認した揚羽が正宗に声をかけてきた。
「荀侍中には申し訳ありませんが、董仲穎が墓穴を掘ったことは我らにとって僥倖にございます」
揚羽は正宗に対して笑みを浮かべた。
「『僥倖』とは少々口が過ぎるのじゃ」
揚羽の言葉に美羽が割り込んできた。美羽は不愉快な表情で揚羽を見た。その視線に揚羽は涼しい表情をしていた。
「美羽殿、申し訳ございませんでした。口が過ぎました。桂花殿、気分を害されたならお許しください」
「いいえ。気にしておりません」
桂花は言葉と裏腹に表情は優れなかった。彼女は揚羽の計画を承知して橋瑁を送り出した。その時点で揚羽を非難できる資格はない。そして、橋瑁一人の命で戦火を小さくできると考えた軍師としての性に桂花は気落ちし同時に間違っていないと思う自分に小さい葛藤を抱いた。
揚羽が桂花に対して詫びると美羽はそれ以上は何も言わなかった。
「気分の良いものではありませんね。こういうことはこれっきりにしていただきたいです」
麗羽は神妙な顔で正宗のことを見た。彼は橋瑁の死に正宗が一枚噛んでいるのではと感じている様子だった。だが、それを口にするつもりはないようだった。それに対して正宗は何も答えなかった。
「正宗様、橋東郡太守の件はお気になさる必要はありません」
冥琳が正宗を気遣うように言った。
「橋元偉の家族には出来うる限り報いるつもりでいる」
正宗は重い口を開いた。
「正宗様、それでいいと思います」
華琳は全てを見透かしたような瞳で正宗のことを見ていた。
正宗達が橋瑁の首を確認した頃、賈?の元にも橋瑁の死が報告された。この場には董卓と段?がいた。三人は橋瑁の死に驚愕し動揺していた。その状況からいち早く立ち直ったのは段?だった。
「使者は門まで送り届けたのではないのか? 護衛の者達はどうしていた」
「護衛全員の死体が門に続く道で
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