暁 〜小説投稿サイト〜
赤翔玄-剣を握りし果てに-
第2話 雛罌粟-運命の輪-
[6/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初
「本当だ、証拠がある」
「証拠あるんですか!」
「あぁ、雛の話は本当だぞ……何だ、お前……アタシが信じられないってか?」
「い、いや、滅相も無い……頂きます…………う、美味い!」
「おうっ、しっかり残さずに食べろよ」

 目の前に並ぶ三品の料理を物凄い勢いで食べた。そう言えば、俺、物凄く腹が減っていたんだ。さっきの雛罌粟さん事でのモヤモヤした感情は空腹と食欲に負け、背後の鋭い視線達にも負けずに料理と向き合った。

「ふぅ〜、美味かった」
「ふふっ、当たり前だ、誰が作った料理だと思っている?」
「そうですね」
「なぁ、翔玄」
「何ですか……女将さん?」
「お前が凄い奴なのは良く分かった。だが、後ろにいる馬鹿共と同じく、お前も一人の人間だ。一人で抱え込み過ぎるな、辛くなったら何時でも家の店に足を遊びに来な。下向きになりそうだったら何時ぞやの馬鹿共同様にアタシが根性を叩き直しやるからな?」
「は、はは……そんな日が来ない様に努力します。それとありがとう御座います、女将さん」

 少し動機は“不純”だが、暫くの間、“雛罌粟”に足を運ぶ事になりそうだ。頼りになる女将さんと大勢の同僚の兵士達……そして、謎だらけの街一番の美人給仕の雛罌粟さん。
 どうやら戦場で名も無き孫呉の兵として一人ひっそりとは死ねない、少し賑やかな人生になりそうな気がした。



 一足先に怖い表情をした同僚の兵士達を置いて店を出ると、店の出入り口の扉の前に雛罌粟さんが一人立っていた。

「どうしたんですか、雛罌粟さん? 店の外で一人立って……」

 雛罌粟さんが俺へと近付き、その白く美しい細い腕で俺の左手を取った。そして、ゆっくりと左手の人差し指に高価な銀の指輪がはめ込まれた。

「これを貴方に差し上げます」
「……こ、こんな高価な物、受け取れません! ……あ、あれ、外れないぞ?」

 はっ、と我に返った時には既に遅く、雛罌粟さんにはめ込まれた銀の指輪はどんなに力を入れても指が痛いだけで、銀の指輪は外れなかった。
 一体、どうなっているんだ?

「ただの銀の指輪ではありません。その銀の指輪は“私”が“貴方”の指にしかはめる事が出来ない指輪です。当然ですが、貴方の左手の人差し指にはめられた銀の指輪は私にしか外す事が出来ませんよ」
「どうして……そんな事を?」

 おかしい……俺が女将さんに注文した料理を作って貰う間に、雛罌粟さんと短い間だったが、二人で話していた時には何とも無かったのに……どうしてだ……雛罌粟さんの声を聞いていると頭が割れそうなくらいに頭痛がする。

「ふふっ、分かりませんか? 貴方が無意識に“剣”を握る道を選んだ様に、私も無意識に“彼”を探す道を選びました。……私の場合は、少々、特殊ですけど……」
「訳が
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ