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赤翔玄-剣を握りし果てに-
第2話 雛罌粟-運命の輪-
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ている人達の為にも、幻滅されない様に必死に努力を積み重ねる事しかしていませんから。それに残念ながら俺には、これと言って”凄い特技”や”特別な能力”もありませんしね」
「ふっ、確かに、中々に見所のある小僧の様だ。いや、それをさらりと言ってのける分、いくら肉体が小僧でもお前は小僧の域を既に超えている。これからは“翔玄”と呼ばせて貰うが、別段、構わないよな?」
「好きに呼んで貰って結構ですよ、“女将さん”」
「翔玄……流石、話が分かる奴だ。この馬鹿共はアタシの事を何時まで経っても、何度注意しても“店長”と呼びやがるんだぞ?」
「……それは困った人達ですね」
「翔玄……アタシは益々、お前の事を気に入ったぞ。今、お前の座っている席をお前の特別指定席にしてやろう。そして、今日に限り……三品まで御代を“無料”にしてやる!」
「え、本当ですか……じゃ、炒飯と焼き餃子、炒め野菜の盛り合わせの三品で御願いします!」
「あいよ――アタシの店の特別指定席に喜ばない辺り、まだまだ、小僧だな」
「何か言いました?」
「何でもねぇよ、気にすんな。大人しく料理ができるまで座っていろ」
「はい…」

 この店に初めて来店して物凄く癖のある女将さんだったけど、初対面ながら少し女将さんと同僚の兵士達の絆を知る事が出来た。それもただの絆じゃない、どんな絆かと説明しろと言われれば困るけど、其処には同僚の兵士達と女将さんとの間に言葉では言い表せない大切な絆が其処にある事が分かった。
 俺は、また一つ、前に向かって進める理由を見つけた様な気がした。

「あの御暇でしたら……女将さんの料理が出来上がるまでの間、少し私とお話しをして頂けませんか?」
「え」
『『『『『『『『『『えぇええええええええええっ!』』』』』』』』』』
「五月蠅いぞ、馬鹿共! 調理中だぞ、それとも……この包丁で切り刻まれたいのか?」
『『『『『『『『『『だ、だ、だ、だって、店長!』』』』』』』』』』
「“女将”だって言ってんだろう! ふんっ、外野は黙って静かにしろ。次、騒いだら問答無用で店から叩き出す!」
『『『『『『『『『『そんな〜…………ぐすっ……』』』』』』』』』』
「泣くなよ、その程度で……全く、器の小さい馬鹿共だ……」

 一瞬、街一番の美人給仕と噂される美人から声を掛けられて驚きの余りに幻聴かと思ったが、周囲の反応から察するに幻聴では無い様だ。冷静になれ、冷静に、悪魔でも普通に、普通に返事を返せばいいんだ、俺。

「お、俺で……良ければ?」
「本当ですか! 嬉しいです、隣の席に座らせて頂きますね?」
「ど、どうぞ……」

 間近に彼女がいる事ではっきりと分かる、ふわりと香る女性独特の甘酸っぱい匂い。
 男だらけの汗臭い泥の混じった悪臭漂う兵站所で過ごしていた為、
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