第2話 雛罌粟-運命の輪-
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程徳謀様が監督官を務める長く激しい調練が終わり、同僚の年上の兵士達に半ば強制的に連れられて来られた食事処は、なんと、街一番の美人給仕がいるという食事処“雛罌粟”。
孫文台様の私兵になった、あの日から、この街に其れなりに長く暮らしている筈なのに、俺は全く、この店の存在に気が付かなかった。
それも仕方がないのかも知れない……あの日から、毎日、毎日、調練と個人鍛錬漬けの日々を送っていたし、安い給金の俺は外食をしに街に出る際は兵站所から最寄りの食事処“春風”に、ずっと、通っていたのだ。
食事処“春風”は値段が安く、一品、一品の量がかなり多い、今の俺の安給金と食事量にぴったりと当てはまる良い店だ。
この店の御蔭で、今まで、とても他の店に行こうとは思えなかったんだ。
そう言えば……俺って、それなりに長く住んでいる筈なのに、この街の事を何にも知らないよなぁ……。
俺が行く街の店は限られている、食事処“春風”、鍛冶屋“金剛”、武器防具屋“江東店”……あれ……よくよく考えたら、三軒くらいしか行くところがないのか?
今の安い給金では高級な店は行けないし、少し値段が張るが行けなくもない店は其れなりにあるが、金の無駄使いは出来ない。
「翔玄、早く店の中に入って来いよ。お前さんが最後だぞ?」
「あぁ、今、行くよ」
店の入り口の上に大きな文字で書かれた“雛罌粟”の看板はとても立派な物だが……この店の外観は少し老朽化が進んだ平屋にしか見えなかった。言い方は悪いが、こんな店に本当に街一番の美人給仕がいるとは思えない。
店の外観もそうだけど、今の時刻は昼間だと言うのに……この店がある通りの他の食事処では店の前に行列が出来ていると言うのに、俺の立っている店の前には行列も出来ていないぞ?
何か裏があるのか…………非常に怪しい店だ……。
店内を警戒し、ゆっくりと店の入り口の暖簾を潜って店内に入った。
「いらっしゃいませ、お客様」
「…………」
店内の中に恐る恐る入った俺に、透き通る様な声で挨拶するのは年上の同僚の兵士達が言っていた通りの“街一番の美人給仕”の姿だった。
「お客様?」
「え、あっ、はい……」
「?」
産まれて初めてかも知れない……ただ、自分の傍に立っている女性の顔を間近で見ただけで、相手の事を何も知らない筈なのに、初めて出会った筈なのに、何処か気恥ずかしくて顔を背ける様な馬鹿な行為をしたのは……しかも面倒な辛みをしてくる同僚の兵士達の前で。
「翔玄……やはり、お前も一人の男だったか。その頬を赤く染める理由もよ〜く分かるぞ。ほら、こっちの四人掛けの机の席、一つ余っているから其処に座れよな、なっ?」
「えっ、俺はあっちの厨房前の一人掛けの席で構わ――「この店では、この店をこよなく愛する
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