第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#19
MILLENNIUM QUEENV 〜Last Judgement〜
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…)
光の一閃が、柔らかな肉を裂く。
(オレは……本当に…………)
バシュッッ!!
意識が、途切れた。
本当に、途切れた。
“そう想った”
(――!?)
崩れた躯に降り注ぐ、温かな感触。
慈愛をそのまま雫にしたような、安らぎに充ちた感覚。
全身を蝕む苦悶が、薄れていく。
闇に覆われた意識が一面の光によって晴れていく。
「な……」
非常にか細いが、声も出た。
閉じた視界も、僅かであるが回復した。
「……」
横たわる自分の頭上、エリザベスが拳を握って伸ばした腕を引き絞っている。
その中程には見事な切り口の裂傷が浮かび、
そこから絶え間なく鮮血が滴って自分に注がれていた。
「波紋傷がそこまで廻ってしまった以上、もう治す事は出来ません。
ならばせめて、私の血で痛みを和らげてお眠りなさい」
「――ッ!」
俄には、信じられなかった。
自分は朽ち果てる寸前で、
その際に視る都合の良い妄想に浸っているのだと想った。
しかし、徐々に意識は、はっきりしていく。
目の前に拡がる、光輝に充ちた世界。
その中心に佇む、彼女の姿。
(どう……して……どう……して……?)
哀切や郷愁とも違う感情に心震わせながら、
何度も何度もそう問うオルゴンに、エリザベスは静かに首を振った。
「関係、ありません。大切なのは、アナタが苦しみ倒れていたという事。
誰かを助けるのに、理由がいりますか?」
オルゴンの心の底で、最後の破片が砕け散った。
今まで頑なに信じてきた、力への信奉、自分の存在のスベテ、
ソレが、跡形もなく粉々に。
裡で舞い散る光塵と共に、永き日の追想が甦った。
その殆どは、果てなき凄惨なる戦いの日々。
自らの張り巡らせた奸計に敵が堕ちた時、
絶望の表情を見据えながら止めを刺すのが堪らない愉悦だった。
力無き者に存在する資格無し、その矜持の許邪魔になる者悉くを
徒に踏み潰すのは実に欣快だった。
ソレらスベテに疑問を抱かず、否定もせず、生きてきた日々。
でも。
幾ら力が在ろうとも、どれだけの戦功を掲げようとも。
誰にも、愛されていなかった。
そして自分も、誰も愛してはいなかった。
ただ力に溺れ、自在法を行使し、終焉など
来ないかのように踊り狂っていた日々。
その終焉が目の前に突き付けられた今、
なんて虚しいんだろう、なんて孤独んだろう。
ただ力の無い者を、惨たらしく踏み躙ってきただけの生涯。
スベテは、無意味。
哀しいほどに、独り。
声なき声で喘ぐオルゴンの躯が、柔らかな腕に包み込まれる。
救いようのない 『罪』 を犯した者でも、
せめて最後は安らかであるように
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