第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#19
MILLENNIUM QUEENV 〜Last Judgement〜
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眼前で聳える超存在にさえ意識を向けず、ただ自分だけを。
最初に逢った時と、同じように。
「……!?」
ふとナニカが、瞳から流れ落ちた。
永きに渡る時の中、一度もなかった感覚。
心中を蝕む絶望や恐怖すら霧散するような……
「そう、苦しいの……」
真っ直ぐな視線が、瞳に灼きついた。
まるで理解出来なかった彼女の精神
ソレが、ほんの少しだけ、解ったような気がした。
こんなにも、こんなにも。
温かい。
「にげ……ろ……せ……ね……き…………」
残された、ごく僅かな気力。
ソレをオルゴンは、気流に掻き消されるような声を発する為に使った。
何故そんな事をしたのかは、自分でも解らなかった。
ただ、勝手に崩れた口唇が動いた。
意味も理由も、その先に待つ結末すら考えられなかった。
『愚かな……』
凍てつくような声が頭蓋に吐き捨てられ、
増殖した触手が戒めの楔を顔面に撃ち込む。
先刻以上の力が搾り取られ、炎が血のように肉のように次々と飛び散った。
その拷問に等しき惨酷を終わらせる為、
一人の波紋使いが赤子を抱えたまま進み出る。
『……』
余りにも巨大な刀身、しかしその照準を精密に修正しながら
紅世最強の自在師は、依り代を通して力を練り始めた。
無論、この最初の一撃は命中たらない。
手負いとは云えエリザベスの反応速度は、空を駆る旋風の如く。
しかしソレを封じる術は既に、ヘカテーの脳裡で構築されていた。
何れの方向に躱すとしても、剣を撃ち出した瞬間エリザベスは空中に飛び上がる。
その際、隙は疎か微かな弛みすらも生まれないだろうが、
大地に着撃した 『エクスカリバー』 は地面を陥没させると同時に
夥しい土砂を瓦礫と共に捲き上げるだろう。
通常の理を無視して噴き挙がる、土の豪雨とも云うべき大地の波濤は
確実にエリザベスの視界を奪い速度をも減衰させる。
ソコへ再び剛刃を二揮り、三揮り、
巻き起こる爆風衝撃に拠って躰を拘束し、
最終的にその射程圏内全域に、
アーサーの存在スベテを炎弾に換え一挙に殲滅する。
今の状態で自らの焔儀は遣えないが、
中級領域の焔儀ならオルゴンも複数修得しているので使用する事が出来る。
我が身を滅ぼすオルゴンの 『切り札』
ソレすらも陽動にして敵を討つ巧妙な策。
超遠距離で対象を操作しながら初見の自在法を行使し、
尚且つ必滅の陥穽を張り巡らせる “頂の座” の怖ろしさ。
幾らエリザベスと雖も、その策謀に嵌っては絶命必至。
肉体の硬度は、必ずしも炎の耐久力と比例しない。
『お別れです…… “千年妃” 』
自ら認めた宿敵に、ヘカテーは礼意を込めて永別を送った。
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