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フロンティアを駆け抜けて
逆鱗
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分のものに出来たという確信があった。だが――


「見つけたぞ、ジェム・クオール!!」


金髪を腰まで伸ばし、紺色のスーツとマントを着たいかにもドラゴン使いですといった感じの18歳くらいの少女がずんずんと大股でジェムに歩み寄ってきた。彼女は自分のモンスターボールを突き付け、堂々と宣言する。

「私の名前はドラコ・ヴァンダー。四天王の娘であり、次のポケモンリーグでチャンピオンとなるものだ。さあ私とバトルしろ!!」
「……いや、私は」
「問答無用!出てこいオノノクス!!」

 金髪の少女はジェムの心境などどうでもいいと言わんばかりに己のポケモンを出す。ダイバが不機嫌そうに割って入った。

「待った。今この子は戦える状態じゃないんだ。代わりに僕が――」
「お前のことなど知らん、引っ込んでいろ!私はチャンピオンの娘に用があるんだ!!」
「……」
「チャンピオンの、娘」

 その言葉は、ほんのわずかに残っていたジェムの心の支え。だけどポケモンを傷つけられたくないという葛藤から、すぐに応えることが出来ず俯いて、そう答えることしか出来ない。。

「どうした?さっさとポケモンを出せ!それとも……怖いのか?」
「……そうよ」
「はっ!チャンピオンの娘であることを誇りにしていると聞いて来たが、とんだ腑抜けだったか。これではチャンピオンの実力もたかが知れるな!!」
「……!」

 挑発なのか本心なのか、ジェムでなく父親を貶すドラコを、ジェムは二色の眼でキッと睨む。

「……お父様を、馬鹿にしないで」
「ふざけるな、戦う意思さえ持てないような者をこの地に送り出す時点で貴様の父親は愚か者だ!!」
「……ジェム、こんな奴に構うことなんてないよ。ここは僕に任せて……」
「……私がやる」

 その瞳は、怒りに燃えていた。ジェム自身を馬鹿にされただけなら、心の折れたジェムはそれを受け入れただろう。だが尊敬し、愛する父親を馬鹿にされては、己を奮い立たせずにはいられなかった。

「ふん、やっとやる気になったか。行くぞオノノクス!!」
「お父様を馬鹿にした言葉……取り消してもらう!出てきて、ラティ!メガシンカ!」

 二人の少女は、己のドラゴンをぶつけ合う。そしてジェムの怒りは、新たな力を覚醒させようとしていた――
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