8. 夜の密会 〜電〜
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大淀さんは……
「とんとん。電なのです」
「あら電さん。提督ならお昼ですよ?」
よかった。大淀さんはやはり執務室で待機中だ。今なら司令官さんもいない。大淀さんを問いただすことが可能だ。
「いや、大淀さんに聞きたいことがあるのです」
「私ですか? 構いませんが……」
「失礼するのです」
ドアを開こうとドアノブに手をかけた瞬間、天龍さんの『ふふ……怖いか?』という声が聞こえたが、それに対して心の中で『今は邪魔しないで欲しいのですッ!』と声を荒げて叱責しておいた。後で聞いた話によると、この時天龍さんはすでに演習をはじめており、ちょうどタイミング良く赤城さんに轟沈判定をくらっていたらしい。
ドアを静かに開くと、大淀さんが執務室の提督の机で書類整理に勤しんでいた。テキパキと書類をさばく大淀さんの姿は、凛々しく頼もしい。きっとこの場に暁ちゃんがいたら、『暁も大淀さんのような一人前のレディーに……!!』と鼻の穴を広げていたに違いない。
「大淀さん、忙しそうなのです……」
「そうでもないですよ? あとは提督からはんこを貰えれば大丈夫ですから。……聞きたいことって、深刻な話ですか?」
書類を読みながら、大淀さんは私に対してこう問いかけた。真剣で至極真面目なその声は、私に勇気をくれる。彼女なら、私の相談に乗ってくれるはずだ。
「深刻というほどではないのですが……司令官さんには内緒で……」
書類を机の上に置いた大淀さんは、そのまま腕を組んで『うーん……』とうなったあと……
「わかりました。私ももうすぐお昼ですし、ここじゃなくて間宮さんで話しましょう。ここだといつ提督が戻ってくるか分かりませんしね」
と言ってくれた。少し待たなければならなくなったが、私の話を後顧の憂いを無くしてから聞いてくれるようだ。大淀さんの気配りがとてもうれしい。
「ありがとうなのです!
「じゃあ先に間宮さんに行って待っててください。私はこの書類全部片付けてからお昼に行きます」
宣言どおり大淀さんは、その場に積まれた書類の束をシュババババッという擬音を立てながら片付けていった。最後に司令官さんの机の引き出しを勝手に開け、そこから司令官さんのはんこを取り出し、各書類の捺印欄にぽんぽんと勝手に押していた。いいのかな……。
「あのー……大淀さん……?」
「はい?」
「司令官さんのはんこ、勝手に押していいのです?」
「いいんです。どうせあの人なら『いいんじゃない? 知らんけど』って言いながら承認しますから」
大淀さんはそう言ってニッコリと笑うと、自身が持っていた書類のすべての捺印欄に、司令官さんの印鑑で捺印をしていた。確かにあの司令官さんならそう言う姿を容易に想像出来るけど、鎮守府の運営ってこんなア
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