8. 夜の密会 〜電〜
[2/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
城さんが片付けている空のお櫃六杯を眺めながら、現在進行形で口から魂がはみ出ている。
「司令官さん? 何かあったのです?」
「ぁあ、いや。何もないから安心していいよ」
私の心配に対し、司令官さんは疲れた笑顔でそう言った。……いや、正確には私の言葉に返事をしたのは司令官さんではなく、司令官さんの口から漏れ出ている魂の方だったけど……司令官さんはどうやら、自分が今まさに幽体離脱しそうな状況であることに気がついてないらしい。
「……ホントに大丈夫なのです?」
「あぁ、大丈夫。それよりもほら。早くご飯食べちゃいなさいよ」
「はいなのです」
司令官さんの魂は無理矢理に作った笑顔を私に向けると、再び虚ろな眼差しでふわふわと中空を漂い続けた。私では司令官さんの力になれないのだろうか……なんだかもどかしい。司令官さんにはいつも迷惑をかけてばかりだ。私だって司令官さんの力になりたいのに。せめて口から出ている魂を元に戻してあげたい。元に戻すお手伝いをしたい。
「もっきゅもっきゅ……提督」
「ん?」
私の横でお昼ごはんを頬張っている集積地さんが司令官さんの魂に声をかけた。最近は集積地さんも何食わぬ顔で食堂でお昼ごはんを食べ、他の艦娘のみんなも特に集積地さんを気にしなくなっていた。彼女はもはや、名実ともにこの鎮守府の一員と呼んでもいいようだ。
「お前の辛さは分かっているつもりだ」
んん? 集積地さんは司令官さんが元気がない理由を知っているのかな?
「集積地……ありがと」
「こう毎日続くとな……だが私も少々眠い」
集積地さん、最近眠れないのかな……言われてみれば、キレイな顔の目の下には、少々クマが出来ている気がする。
……あ、司令官さんの魂が口の中によっこいしょって感じで元に戻った。安心したけどなんだか悔しいなぁ。
「そうなの? 全然そんな風には見えないけど」
「お前が寝かせてくれんからな」
? どういうこと?
「まったく……毎晩毎晩……こっちの身にもなってくれ」
「その割には昨夜も元気だったじゃないの。少なくとも精根尽き果ててる俺よりはマシでしょ」
「私は基本的に寝転がってお前を受け入れるだけだからな。毎晩続くとうんざりするが」
はわわわわわわわわ。なんだか話の内容がふしだらになってきた気がするのです。
「お前さんだって俺のこと受け入れてくれてるじゃないの」
「お前は気付いてないかもしれないが、帰る時のお前の顔はスッキリして清々しい。そういう顔をされると私も役に立てたと思えて嬉しいんだ」
「そういうもんなの?」
「そういうものだ。それが私の部屋に入ってくる時は色々と溜まった顔だったらなおさらだ」
「そんなつもりはさらさらないんだけどなぁ……」
「あ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ