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WHITE ALBUM 2 another story ~もう一つのWHITE ALBUM~
【1話】とめどなく降り続ける雪
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大きなライブでスポットを当てられている歌手のようだった。

〈届かない恋をしていても、映し出す日がくるかな〉

サビが始まると再び彼女の声を聞き入った。


曲が終わると同時に夢を見ていたかのような俺は現実に引き戻される。
だが、ただ現実に引き戻されたというわけではなく、確かな感触があった。

・・・やっぱりこれなんだ。俺を突き動かすのは音楽なんだ。
こんなに冷め切った俺を豊かにしてくれるのは一生かかって探してもこれだけなのかもしれない。
たった2曲で、今までの音楽を縛ってきた自分を(ほど)くように彼女の音楽は衝撃的だった。


「最後まで聞いてくださってありがとうございました」

二回目のその言葉もやはり悲しさが残っていた。
周りをもう一度見渡してみると先ほどと状況は変わっていなかった。

それも仕方のないことだろう、初めてのライブましてや今日はクリスマスつまり恋人や家族はたまた友人と過ごす日なのだ。
そんな日に一刻も早く帰ろうとするのは当たり前で、こうして最後まで聞いてられるような孤独な人間は用事なしでは外にでないだろう。

彼女は撤退するらしく急いで片づけを始めた。

俺は彼女に勇気を出して話しかけた。
またあの歌声が聞きたいと。

「・・・惚れました」

彼女は驚きあたふたしている。

「あ、あの、お気持ちは嬉しいんですが私あなたのこと知らないですし・・・そういうのは・・・」

彼女は何か勘違いをしているようだったのでもう一度言い直した。

「あなたの声に惚れました。次のライブはいつ行うのですか??」

ついでに本題も添えておいた。

彼女は頬を真っ赤にして、マフラーで顔を少し隠した。

「・・・1月の2週目の土曜日のこの時間です。」

少し聞き取りづらかったがなんとなく聞こえた。
彼女には少し恥をかかせてしまったと思いつつ、そんな顔も可愛いなと思ってしまった。
時間も時間なので俺はこの場を立ち去ることにした。

「また来ますね」

「はい!!お待ちしています!!」

彼女は笑顔で答えてくれた。
彼女にとってはこれほどない嬉しい言葉だった。

「あ・・雪が降ってきた・・・」

その雪は街を白く包み込み、一段と寒さを感じさせると同時に、恋人たちに送られたような幻想的なホワイトクリスマスを演出した。

「WHITE ALBUMの季節だ」

「ですね」

彼女は笑顔で微笑んだ。
よくある表現かもしれないが、その笑顔はまるで天使みたいだった。

では。と最後に一言交わし俺は改札口へと歩き出した。






一人のサンタコスをした少女が私のもとに駆け寄ってきた。

「雪降って寒くなってきたけど大丈夫?|恋愛
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