折れ曲がりストレート
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本当に、偶然だったのだ。
その日、たまたま少し寝過ごしてしまって。
普段より遅れてギルドに顔を出せば、既にナツがルーシィ、ハッピーと仕事に出ていて。グレイを仕事に誘おうとしているジュビアの背中を押して、エルザは幸せそうにケーキを食べているから特に声をかけず。ルーとアルカは前日から泊まりでの依頼でおらず、ヴィーテルシアはここ数日風邪気味だったのが悪化して熱を出していて。
なんとなく、本当になんとなく、依頼でも受けようかと思い至って、誘う相手もいなかったから久々の単独行動になり。
近場での大して難しい依頼でもなかったから手早く片付けて、報酬も受け取って帰ろうとした時。
たまたま、依頼先では祭りをやっていて、街中が人で溢れていて。
「…っと、すいませ……」
だから、歩いていて人にぶつかってしまうのはある種当然で。
「……ティア?」
そのぶつかった相手から、聞き覚えのある声で名前を呼ばれて。
「……ラクサス…?」
その相手が破門中の昔馴染みだったのは、本当に偶然なのである。
がやがやと人の声に溢れる街の、人混みの中から外れたベンチ。そこだけぽつんと誰もいない場所に、更に人が近づきにくくなる二人が並んでいた。
片や破門中とはいえマカロフの孫としても魔導士としても名を知られるラクサス、片やそのルックスやら棘だらけの言葉やら起こす問題やらでギルド最強の女問題児として名を轟かすティア。そんな二人が同じベンチに、間に二人ほどは入れそうなスペースを開けて、揃って笑みの一つもなく、笑みどころかどこか気難しそうな表情でいては、その近くのベンチが空いていても近づく事すら出来ない。
「…何でこんなトコにいる訳?」
「破門中なんでな、放浪の旅してんだよ。…そっちは」
「仕事終わりだけど」
「ナツ達は」
「何、会いたかったの?生憎今日は別よ、…いや、今日はっていうか普段から一緒な訳じゃないけど」
もごもごと何やら言い訳染みた言葉を並べるが、ギルドではハッピーに次いでナツといるであろうとあまりギルドにいなかったラクサスでさえ思う。
「…アイツ等、元気か」
「はあ?…ああ、雷神衆ね。元気よ、一回フリードが坊主になったけど」
「は?何で」
「ロン毛に飽きたんじゃないの」
本当は孫の一件の責任を負って引退しようとしたマカロフを止める為なのだが、それをわざわざ本人に言うほど今のティアは冷酷ではなかった。ラクサスの事は嫌いだが、だからといって無闇に責任を負わせたりはしない。第一過ぎた事だし、と心中で呟く。
「……それで、ジジイは」
どこか言いにくそうに、絞り出すように問う。問われた彼女は瞬きを一つして、小さく息を吐いた。
「そんな言いにくそうにす
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