折れ曲がりストレート
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から、親を慕う気持ちだって全く理解出来ない。親をマスターに置き換えて考えても、頭にもやがかかるだけだった。
子供を追い出す事になってしまった親の気持ちも解らない。ティアは誰の親でもないからだ。だからマカロフの気持ちもラクサスの気持ちも、そういうものかと壁越しに眺めるだけ。
(多分、アイツも間違ってない。けどマスターも正しかった)
今のティアに解るのは、それだけだった。
「よお」
「……何かしら」
報告を終え、相変わらず人通りのない廊下を歩いていた時だった。
コツコツと鳴らしていたヒールの音が止まる。無意識のうちに冷たくなった声を返すと、相手は真正面を向いたまま「愛想ねえな」と肩を竦めた。つい先ほどまでマカロフとの会話に挙がっていたその人は、壁に背を預けたままようやく顔を向ける。
「人の会話を盗み聞く趣味があったとはな」
「趣味が悪いと解っていながらやり返してくるアンタに言われたくないわ」
彼―――ラクサスは、ティアが会話を聞いている事に気づいていた。気付いた上で何も言わず、気づかれていると悟った上でマカロフとティアの会話を聞いていた。
ティアとて気付いていなかった訳ではない。気配がある、とは思った。気になって仕方がなくて、扉を開けてやろうかとも思った。けれど敢えて放っておいた。聞かれて困る話はしていないし――――話を聞く事でマカロフの決断を解ってくれるんじゃないか、と、どこかで淡く期待していたのかもしれない。
「それで、何の用?言っておくけど仕事ならお断りよ。こっちは帰って来たばっかりなんだから」
腰に手を当て問いかける。目つきが鋭くなってしまった自覚はあるが、こちらも疲れているのだからさっさと用件は済ませてほしいのだ。仕事内容が大した事なかったとしても、それは疲れない訳ではない。やたらと感謝の意を示してくる依頼人だとか、何かと食事に誘ってくる赤の他人だとか、接するだけで疲れる相手なんて山ほどいる。体力はまだまだあれど、気力は既に限界だった。
「怖え顔すんなよ。……用件は仕事の事じゃねえ」
くつりと笑ったラクサスが、壁から背を離して言う。
「お前―――オレと組まねえか」
目を見開いた。何を言っているのか、一瞬理解が追い付かない。
組む、というのはチームの事だろう。仕事を円滑に進める為にチームを組むというのは珍しい事ではない。ギルドにもいくつかチームがあるし、身近なところでいえば何かとティアを頼ってくる二人はチームを組んでいたはずだった。
だから、チームに関しては特に驚きはない。それを言い出したのがラクサスであるという事が、ティアの思考を僅かに鈍らせた。
「…正気?」
「当たり前だろ」
心外だとでもいうように眉を上げた
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