折れ曲がりストレート
[8/14]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
た人を。
――――いつだっておかえりと言ってくれるマスターを、苦しめたくなんてない。
「ふむ…御苦労じゃったな、ティア」
「別に…大した依頼でもないわ。私を指名するくらいだからS級相当かと思ったけど、そうでもないし」
手渡した書類に目を通し終えたマカロフの労いを、少し照れくさそうに目を逸らしてティアは受け取った。時に冷酷とさえ言われる彼女が年相応の少女らしく表情を変えるのが少し微笑ましい。
「その…悪かったわね、趣味が悪い自覚はあったわよ。けど…アイツにはアイツなりの考えがあったとはいえ、それでマスターを責めるのには納得がいかないの」
「…いや、ラクサスの気持ちも解る。父親を破門にされて、怒らない訳がなかろう。じゃが、ワシは…奴を破門にする以外の道を取らなかった。息子であるのに、じゃ」
伏せた目。ぱさりと机の上に置いた書類上の文字に目を落として、マカロフはどこか力なく呟いた。その目は書類に向けられているが、読んでいる訳ではないのだろう。たまたま伏せた先にそれがあっただけのようだった。
―――その目を、ティアは知っている。過去に二回、見た事がある。一度目は息子を破門にすると決めて、その息子がギルドを出て行った時。そして二度目、その視線の先にいたのは兄だった。恋人が行方不明になって、生死すら曖昧で、ただ誰かに連れて行かれたらしいという事だけが明らかになっていて。
『ゴメン、マスター。オレ、ギルド辞める。どうしても、やらなきゃいけない事があるんだ』
――――妹と弟を頼みます。
そう言って頭を下げて、その日のうちに荷物をまとめてマグノリアを去った兄。恋人を探す為、最悪の事態も想定した上で、それでも最前線で知る為にと評議院を目指して行った後ろ姿。
それを何も言わずに見送った、あの時と同じような目をしていた。
「息子だから、じゃないの」
その目は嫌いだ。その視線の先にいた、あの頃の兄の目を連想してしまう。兄とマカロフの対照的な目が、あの頃の記憶にしっかりと焼き付いている。
だから、それを払拭したくて、ほぼ無意識にティアは口を開いていた。
「私は、家族だの何だのって考えに疎いし、自分で言っておきながらよく解ってないけど……けど、マスターは、アイツが実の子供だからこそ破門にしたんじゃないかって思うわ。子の間違いは親が正す、ってヤツなんじゃないの?あの場でマスターが破門を決めてなかったら、きっとギルドに何かしらの悪影響があった。そのせいで、マスターが大事にしてるガキ共が傷ついたかもしれない。……私は、マスターの決定を支持するわ。息子であれ何であれ、悪い芽を摘む事の何が悪なのよ」
親を追い出された子供の気持ちは解らない。ティアにとって、親とは自分を殺しかけた奴のうちの二人に過ぎない
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ