折れ曲がりストレート
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にしている余裕なんてない。止めなさいと、それ以上言わないでと、叫べない言葉が脳内で響く。
(アンタだって解ってるんじゃないの、アンタが誰より解ってるんじゃないの!?)
それを突き付けられて、一番辛いのは。
「何で親父を破門にしやがったァ!」
――――マスターで、破門になったアイツの父親の、アンタの祖父だって事くらい。
そこから先の会話は、正直右から左へ抜けるようだった。
ただ頭に残っているのは、仲間の命を脅かす者はギルドに置けないとマカロフが言った事、それにラクサスが噛み付いて、自分が破門になったら親父が立ち上げたギルドに入ると言った事。アイツがギルドの不利益になる情報を持ってギルドを出た事に焦るマカロフに、ラクサスがこう言った事。
「オレはいずれアンタを超える。親父の為じゃねえ。オレがオレである為に……」
決別するような声色で言った、それがティアの耳にこびりつくように残っていた。
「一人の男である為にだ」
廊下の向こうに消えていく背中を眺めて、曲がり角からそっと出る。部屋から出てくる気配がしたと同時に持ち前の速度で隠れたこちらに、どうやら彼は気づかなかったようだった。
「…何でよ」
中途半端に出ていた右足を引っ込める。コツンとヒールの音がした。
絞り出すような声が、細く小さく、吸い込まれるように消えていく。
「何で…何でアンタが……!」
解ってはいるのだ。反抗期なのか元々マカロフに噛み付く事が多くて、周囲は色メガネでしかこちらを見なくて、その中で実の父親を実の祖父に破門にされて。これで怒らない訳がない。
解っていて、十分に理解した上で、それでも納得が出来ないのは、心のどこかで思っていたからだろうか。血の繋がりのない、赤の他人である自分が受け入れられたマカロフの意思を、血の繋がった実の家族が受け入れられないはずがないと。家族だから誰よりもそれを解ってあげられる存在だと。漠然とした家族のイメージしかなかったから、そういうものなのだろうと勝手に思っていた。
きっと逆なのだ。ティアが受け入れられたのは結局のところ他人だからで、ラクサスがそれを認められないのはどう足掻いても逃れられない血の繋がりのある家族だから。
「解ってあげてよ…家族って、そういうものなんでしょう」
―――それでも解ってほしいと、ラクサスに理解を求めてしまうのは、我が儘だろうか。
その決断が簡単なものじゃなかったのだと、マスターだって苦しかったのだと知ってほしいと思うのは、エゴだろうか。
「…やはり聞いておったか、ティアよ」
我が儘だろうと、エゴだろうと、私は。
「……マスター」
お父さんを。
家族だと言ってくれ
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