7. それは神様だった 〜電〜
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私と集積地さんは知っている。今手に持っているどら焼きの残りを、再び口に運ぶことだ。私と集積地さんは、再びあの感動と喜びを味わいたくて……もう一度、その儚い美しさに身を委ねたくて、残りのどら焼きを口に運んだ。
「美味しいのです! 美味しいのです!!」
「うまいな……うまいなイナズマ!」
「あっ! お前ら! 俺の分のどら焼きも残しとけよッ!!」
『キヤァァアアアアア!』
私と集積地さんは止まらなかった。手に持ったどら焼きがなくなれば新たなどら焼きを手に取り、どら焼きを口に運べばお茶をすすり……お茶を飲んだら再びどら焼きを頬張って……そうしてしばらくの間、私と集積地さん、そして天龍さんは、どら焼きの甘い誘惑の虜となってしまった。
そうしてどら焼きが残り3個になったときのことだった。ゴウンゴウンという貯蔵庫の入り口が開く音が大げさに聞こえ、外の空気と光が貯蔵庫に侵入してきた。
「……誰かが来やがった!?」
「バカなッ……!?」
貯蔵庫内に鳴り響くコツコツという靴音。こんな音を立てて歩く人は、この鎮守府ではただ一人。この靴の音は男性が履く革靴の音だ。ということは……
「おーい集積地ー」
「し、司令官さん!?」
「なんだ電もいたの? ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
そう。鎮守府の中でたった一人の男性である司令官さんだ。どら焼きの熱狂で我を忘れていた私たちの意識が、司令官さんの声で現実世界に呼び戻された。私たちはどら焼きの惨状を見る。20個もあったどら焼きが、今や残り3個……
「や、やべーぞ電……」
「で、でもこれが司令官さんのものだと決まったわけではないのです……!」
「俺が酒保に頼んで取り寄せといたどら焼き知らない? 今日来るお客さんのために用意したんだけど、いつの間にか酒保から無くなってたらしいんだよねー……誰も知らんって言うし……」
全身の血の気が引いた。私たちは司令官さんがわざわざ取り寄せたどら焼きを食べてしまったというのか……!? そうこうしている間にも、司令官さんの足音は容赦なく私たち三人の元に近づいてくる。いけない。このどら焼きの残骸をなんとかしないと……私たち三人は残り2個のどら焼きと包み紙の残骸を持って、司令官さんの死角になるボーキサイトの陰に隠れた。
「い、電たちは知らないのです!」
「? 電、なんか焦ってない?」
「焦ってねーって!」
「天龍もいるの?」
「そ、そうだ知らない! 『をだや』のどら焼きなんか知らない!!」
「? 俺何も言ってないのになんで取り寄せたどら焼きが『をだや』のどら焼きって知ってるの?」
集積地さぁぁああああん!!! 余計なことを言ったらダメなのですぅぅぅううう!!!
「……まぁ、知らんなら仕方ないな……他を
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