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俺の四畳半が最近安らげない件
試合15分前
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を振り下ろそうとした俺をセコンドが抑え込むようにしてリングに上がらせ、強引に試合開始……
「でな、ゴングと同時にお前は一気に間合いを詰め、怒りに満ちた右ストレートを相手の顎に叩き込み、勝負は一瞬。観客ポカンよ。いやはや、大したもんだ!ともあれ…タイトル奪取、おめでとう!!まだまだ現役続行だなわはははは!!」
興奮に満ちた顔でまくしたてる社長と、はぁ…そうすか…と呟くのが精一杯の俺。井上に突撃された家族や友人は、入場の光景で何かを察してくれたらしく、恐る恐る様子を伺うようなLINEが届いていた。誤解が解けたのは良かったが、どうも皆との距離が広がったような気がする。彼女には土下座された。
「俺さ、毒島って技術はちょっとしたモノなんだけどさ…闘志っての?相手に対する怒りが足りないなぁ〜、って思ってたんだよ!ああいう試合って技術とか緻密な計算とかも大事なんだけどさ、まず相手を『お!?』と思わせる圧が要るんだよな!!」
「はぁ…」
「いいぃ!!実にいい試合だった!!」
「…どうも」
「あの木下の友達、なんだっけ、井上?あれ意外といいかもな。次の試合でまた頼むか、はははは!!」
「勘弁してくださいよ」
社長はげらげら笑いながら席を立った。相変わらず忙しい人だ。…まぁ、俺も忙しいんだが。マスコミ対応や次の試合に向けた減量、やることは盛り沢山だ。俺も、席を立った。





狂乱のタイトル戦からはや1カ月。
薄暗い控室の中央にパイプ椅子を据え、俺は腰を降ろした。
社長はああ言うが、怒りにまかせたラフファイトは俺には向かない。ボクシングを始めて20年近く、俺はこのスタイルでやってきたんだ。緻密なデータ収集と徹底した対策、完璧な体調管理、そして集中。
次の試合もタイトル戦。気を抜けない。集中だ、集中……。
その時、突如控室のドアがノックもなく開け放たれた。


「ちわーっす、木下の代理の井上でーっす!!!」


……木下からLINEが入った。<先に謝っておきます。社長指示です、すみませんm(_ _)m;>


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