暁 〜小説投稿サイト〜
テキはトモダチ
6. 一航戦とビッグセブン(後) 〜赤城〜
[7/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
るけど。

「そうですね。提督は一人では鎮守府運営も出来ませんし……戦果も全然上げられないし……」
「そう責めないでよー……確かに大淀いないと鎮守府運営も出来ないし、艦隊指揮はみんなに頼りっぱなしだけどさー……」

 苦笑いしながら熟考した結果、大淀さんは素直に思ったことを口にすることにしたらしい。戦果が上がらないのは私達の練度不足もあると思うと耳が痛い。大淀さんの、辛辣ながらも柔らかい叱責を受け、提督は死んだ魚の眼差しのまま苦笑いを浮かべていた。

「とりあえず提督、血を拭いてください。私は氷の準備をしますから」
「うんお願い。赤城も言付け頼んだよ」
「了解しました。……あと、提督」
「ん?」

 私はこの時、以前の大淀さんの言葉を思い出していた。

―― あの人が私たちをとても大切にしてくれているのは本当ですよ

 この言葉を聞いた時、私は大淀さんの言葉を信じることが出来なかった。だが先ほど目の前で繰り広げられた光景を見て……提督が中将に立ち向かう姿を見て、その認識が変わった。

「今までああやって、私たちを中将から守ってくれていたんですね。ありがとうございます」

 確かに提督は、鎮守府運営は苦手なのかも知れない。書類整理もタスク管理も苦手で、大淀さんがいないと仕事が蓄積していくばかりなようだ。艦隊指揮も苦手だ。だから海上戦闘は私達に丸投げで、おかげで鎮守府の戦果はまったく上がらない。他の鎮守府に比べると、この鎮守府は落ちこぼれの部類に入るだろう。

 だがその分、提督は自分にしか出来ないことをやっていた。私たちが誰の目も気にすることなく自由に動き本来の仕事に集中出来るよう、提督は私たちを全力で守っていたようだ。そして提督は、私たちが自由に行動した結果の責任をしっかりと負っている。その意味では、彼は私たちにとっては理想の上官と言えるだろう。

 彼の元であれば、私たちは何者をも恐れず自由に動くことが出来る。それはある意味では、私たちにとってはこの上なく恵まれた環境なのかもしれない。そんな素晴らしい環境を作ってくれた提督に対し、私はやっと上官としての威厳を感じ始めていた。

「こんなことしか出来ない、うだつの上がらない提督ですよ。お前さんたちはいつものように、気持ちよーく仕事してくれりゃいいんだから」

 そう言って笑う提督の目は、いつもに比べて少しだけうれしそうだった。相変わらず死んだ魚の目だったけど。

 中将とロドニーさんが鎮守府から離れたのを確認した後、私は資材貯蔵庫に向かう。二人を見送った鳳翔さんと球磨さんに話を聞いてみたところ、ロドニーさんの艤装は前方への攻撃に特化した装備だったようだ。執務室で彼女が背負っていた巨大なランスもその一環なのかもしれない。

『スピードはそんなに出て
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ