6. 一航戦とビッグセブン(後) 〜赤城〜
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将閣下なら私以上に把握しておられることと存じます。……が?」
提督がそう言い終わるか終わらないかの時。中将が勢い良く提督の襟を両手でつかみ、そして無理矢理に立ち上がらせた。そしてそのまま提督の襟を力任せにねじり、我慢しきれない怒りをにじみ出す顔を近づけた。
「何のためにここにわざわざロドニーを連れてきたと思っとるんだ貴様は……ッ!?」
「我が鎮守府の栄光ある第一艦隊との親睦を深め、日本文化にいち早く馴染んでいた……」
「お前が匿っている敵をねじり潰すために決まっているだろうがッ!!!」
ついに堪忍袋の緒が切れたと思われる中将の右拳による鉄拳制裁が、提督の左頬を直撃した。殴られた提督はその勢いに身体を持って行かれ、提督から見て右側にある戸棚に身体をぶつけ、床に倒れこみ、うずくまった。
「提督……ッ!」
「言え! 言わんかッ!!」
「……」
たまらず提督に声をかけたが、提督は答えない。目深に被った帽子のせいで、私の角度からは床に倒れこんだ提督の表情が見えない。執務室に訪れる耳にうるさいほどの静寂。大淀さんが叩くキーボードの音だけが機関銃のようにバチバチと鳴り響く。
さっきまでは中将を茶化しつつ責め立てる提督の言葉に清々しさを感じていた私だが、さすがにここまで来るとやり過ぎだ。たとえこんな提督でも、やはり上官が殴られたのに黙って見ているのは気持ちが悪い。たまらず中将を制止した。
「中将閣下! 意見具申よろしいでしょうか!」
「黙れ赤城!! 楯突くようなら貴様は解体処分だッ!!」
『私の上官はあなたではない』という言葉が喉まで出かかったが、なんとかこらえる。大淀さんが叩くパソコンのキーボードの音だけが鳴り響いている。気のせいか先程よりも音が大きく、激しくなってきている。大淀さんも中将に対して怒りがたまっているようだ。
「大淀ッ!」
「……」
「やめんか大淀ッ! パソコンの音がうるさいぞッ!!」
「私の仕事はこのミーティングの記録です」
「やかましいッ! いいからやめろッ!!」
中将の怒りが今度は大淀さんに向いたようだ。大淀さんはいつものように右手でメガネのズレを直した後、チラッと中将を見て、すぐにパソコンに視線を落とした。ここからでも分かる。彼女は今、猛烈な勢いでキーボードを叩き、この内容の記録を取ることで怒りを表現している。
「……やめなさい大淀」
うずくまっていた提督が右手を大淀さんに向け、静かにそうつぶやいた。いつもの、覇気のない優しい言い方だ。
「……よろしいのですか?」
「うん。いいからやめなさいよ」
提督の指示を受け、大淀さんの手が止まった。今この室内で聞こえる音は中将の荒い息遣いのみとなった。静かに立ち上がり襟を正した提督は、何食わぬ
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