5. 一航戦とビッグセブン(前) 〜赤城〜
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『あー……あー……赤城。対空演習が終わり次第、執務室に来るように』
集積地棲姫さんが資材貯蔵庫に居を構えて2日ほど経った頃のことだった。その頃にはすでに集積地さんはみんなと馴染み始めていた。もっとも、私を含む何人かの子とはまだ打ち解けてはいないけれど。
「ぜひー……ぜひー……姐さん……」
「はい?」
「提督が……呼んでるぜ……どうすんだよ対空演習……」
あの日……電さんが集積地さんを鎮守府に連れ帰った日から、なぜか天龍さんの対空演習に付き合うのが私の日課となっていた。天龍さんは未だ私の艦爆隊の猛攻を捌ききることは出来ないが、それでも最初の頃と比べると随分と対空戦闘の腕が上がったようだ。轟沈判定の損傷を受けるまでの時間がだいぶ伸びてきた。
今日も私は朝から天龍さんの対空演習に付き合っていた。提督の呼び出し放送が鳴り響くまで、私の放った艦爆隊が天龍さんを完膚なきまで叩きのめしたところだ。
「そうですね……終わり次第ということですから、もう一戦やりましょうか」
「よし来やがれっ。次こそ姐さんの艦爆隊を捌ききってやるぜ!」
私は天龍さんのこのやる気を買っている。今でこそ私の爆撃に手も足も出ない天龍さんだが、この調子で演習を続けていればいずれは私の爆撃を捌ききれるだけの腕を身につけることが出来るだろう。
「では行きます! 艦爆隊、発艦します!!」
「来いや! 次こそ全機撃墜してやるッ!!」
だが、それまでの道のりはまだまだ遠いようだ。最後の一戦も、天龍さんの完敗で終わった。私の艦爆隊の猛攻を捌き切るには、彼女はまだ練度と経験が足りない。
「姐さん……さすが一航戦だぜ……ぐでー……」
「いえいえ。天龍さんも順調に腕を上げてますよ」
将棋がうまくなるコツは、ひたすら達人と対局を繰り返すことだと何かで聞いた覚えがある。私が達人かどうかは分からないが、天龍さんは、このままこの鎮守府になくてはならない対空戦の達人となってくれるはずだ。
天龍さんを存分にしごき倒した後、私は演習場から執務室へと足を運ぶ。あの日天龍さんがヒビを入れたドアをノックし、室内からの返事を待った。
「とんとん。提督、赤城です。呼ばれたので伺いました」
「ご苦労さーん。入ってくれー」
さっきまで対空演習に付き合っていたせいか、それともヒビがあるからか、ドアノブに手をかけた途端天龍さんの『フフ……怖いか?』というセリフが頭をかすめた。先ほど私に完膚なきまで爆撃されてもなおこのセリフを私の頭に響かせるあたりは、さすがは天龍さんと言うべきか。
「それでは失礼します」
「んー。おつかれさーん」
ヒビが入ったドアの向こう側には、いつもの死んだ魚のような眼差しの提督がいる。
「提督、ご用件をどう
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