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テキはトモダチ
5. 一航戦とビッグセブン(前) 〜赤城〜
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『あー……あー……赤城、執務室に来てくれ』

 という、覇気のない申し訳無さそうな提督の館内放送が響いた。貯蔵庫内にいつの間にか持ち込まれた可愛らしい壁掛時計を見る。中将が到着する時間まであと10分ほどだ。

「……そろそろですね」
「赤城さんは今日、中将さんに会うのです?」
「ええ。提督に頼まれて、話し合いの場に同席するんです」
「赤城さんなら大丈夫だと思うのですけど……気をつけて欲しいのです」
「分かっています。ありがとう電さん」
「は、はいなのです!」

 うつむきがちに私に声をかけてくれる電さんを見る。必死に隠しているようだが、彼女の左手は未だに少しだけ震えていた。どうやら電さんは、中将にかなりの苦手意識を持っているようだ。一体どれだけ罵倒されたのか……なんだか腹が立ってきた。

「アカギ」
「はい?」
「いや……」

 集積地さんは集積地さんで、何かを言いたげに私に声をかける。『迷惑をかけてすまない』とでも言いたいのだろうか。もしそうだとしても、今の私には普段ほどの感動はないだろう。私は今、仲間をここまで追い込んだノムラ中将というその人物への不快感で一杯だからだ。

「集積地さん」
「?」
「電さんをお願いします」
「……分かった」

 私の言葉の意図を察してくれたのか、集積地さんは電さんの震える右手を握っていた。電さんのケアは彼女に任せよう。少なくとも電さんのことに関しては彼女は信用出来る。それに、私は私で、やるべきことをやるだけだ。

 胸いっぱいの不快感を我慢しながら執務室に向かい、ヒビが入ったドアをノックする。

「とんとん。提督、赤城です」
『遅いぞ!! 私たちをいつまで待たせる気だ!!』

 唐突に部屋の中から聞こえる怒号。なるほど。この声の主が中将か。予定よりも早く到着したようだ。

『はいよー。そのまま入っちゃってー』

 まさか提督の声に安心を感じる日が来ようとは夢にも思わなかった。普段なら別に何とも思わないこの覇気のない声が、今だけは耳に心地いいとても落ち着いた声に聞こえるから不思議だ。

「了解しました。赤城、入ります」
「何が了解だッ! さっさとせんかバカタレがッ!!」

 うちの提督とは真反対のタイプのようだが、人を不快にさせる才能に関しては中将は提督よりも恵まれているらしい。いらだちを抑えつつドアノブに手をかけ、静かにドアを開く。

――フフ……怖いか?

 今の私は機嫌が悪い。八つ当たりだというのは重々承知だが、後ほど天龍さんを交えた二度目の対空演習を行うことを決意した。本気ですりつぶしてやる。申し訳ないとは思うが、ドアノブに手をかける度に私の頭の中に語りかけてくる天龍さんの方が悪い。

 ドアを開き、室内を見回す。室内には、い
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