5. 一航戦とビッグセブン(前) 〜赤城〜
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」
「? 嫌な予感?」
提督は自分の眉毛を困ったような八の字に歪ませ、件の書類を私に渡して見せてくれた。渡された書類を上からさらっと流し見していく。
「書類に何か不備でもあるんですか?」
「不備なんかないよ?」
「では提督は、この書類のどこを見て嫌な予感を感じたのですか?」
「いやな。詳細の部分を見てみなさいよ」
提督に促され、詳細の項目に目をやってみる。来訪する予定の日付は今日……随分急な話だが、それだけ急を要する事態ということか……予定時刻は午後3時。今から1時間後というわけだ。
「提督。一つ質問よろしいですか?」
「いいよ。気になるところを見つけたろ?」
「はい。人数の項目ですが、『ノムラマンゾウ中将。他艦娘一名』とありますが」
「あるねぇ」
「具体的に誰のことか聞いてますか?」
「いや。聞いてない」
私の記憶に間違いがなければ、この手の書類の場合は来訪者の名はしっかりと明記されているはずだ。以前にも何度かこの鎮守府にもお客さんが顔を見せたことがあった。だがそのいずれも、事前の通達において身分が明らかにされていた。名前と所属、軍籍の場合はその階級……最低限の情報は事前に明確にされた状態で知らされていた。それは人間であれ艦娘であれ変わらなかった。
だが今回は違う。なぜか中将とともに訪れる艦娘の素性は明らかにされてない。それが艦娘であるという事以外は明記されていない。
「これはどういうことでしょうか?」
「俺も何も聞いてない。誰が来るかも聞いてない。艦種すらも通達されなかった」
「そこまでする必要はないかもしれませんが、先方に確認はしたんですか?」
「『知らなくていい』って一蹴されちゃったよ」
永田町鎮守府の中将は、相当にお冠のようだ。
しかし考えれば妙な話だ。確かに、艦娘の誰が来訪予定かなどいちいち明記する必要のない情報ではある。駆逐艦の子だろうが空母だろうが戦艦だろうが、艤装を脱いだ艦娘は人であることに変わりはない。一人の人として艦娘を見た場合、駆逐艦と戦艦、空母に成長度合い以外の艦種ごとの違いというものはない。
だが、かといって別に隠す情報でもないはずだ。いちいち明記する必要もない情報ではあるが、別に秘密にしておく情報というわけでもない。問い合わせをされれば、相手に伝えてしまっても何も差し障りはないはずである。
にもかかわらず、『知らなくていい』といちいち秘密にしているということは、そこには何か意図があるはずだ。
「誰が来るのか、何か心当たりはないんですか?」
「あるよ」
「だから私にも同席して欲しい……そういうことですか?」
「さすが赤城。話が早いねー」
心がこもってない褒め言葉を聞かされたところで別段何の感慨もないが、確か
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