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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百九十六話 白狐
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有りません」
「?」
グリーンヒル総参謀長の言葉にボロディン本部長を除く皆が訝しげな表情をした。私も同じだ、何が有る?

「共同占領を行なった後、両軍は引き上げる事になります。その後、帝国がフェザーン方面から同盟領への侵攻を図る場合には、フェザーン市民に反帝国活動を行なわせるつもりでした」
「反帝国活動?」

「そうです。フェザーン人による組織的なサボタージュ、ゼネラル・ストライキによる社会、経済の運用システムの無力化です。それによってフェザーンを補給基地、中継基地とする帝国の意図を挫く」

ホアンが唸り声を上げた。トリューニヒトが頷きながら口を開いた。
「なるほど、帝国が汚れ仕事をするのであればフェザーン人達に恨まれるのは帝国だ。十分に可能性は有るだろう」

「共同占領中は我々はフェザーンに対して同情的なポーズを取るだけで良いのです。そして彼らとの間に有る程度の親密ささえ確立できれば後は時間をかけてそれを深化させる。そう考えていました」

「フェザーン人によるゲリラ活動か……、君達はそんな事を考えていたのか?」
ホアンが呆れたように声を出した。グリーンヒル総参謀長が、ボロディン本部長が顔を見合わせ苦笑する。そしてボロディン本部長が口を開いた。

「正確にはイゼルローンのヤン提督が考えたのです。同盟軍には戦力が無い、である以上同盟軍は弱者の戦略を採らざるを得ない。味方を多くし、正面から闘わずに敵を撤退させる。我々もそれがベストだと考えています」

「一つ訊いていいかね、ボロディン本部長」
トリューニヒトが沈痛な表情でボロディンに問いかけた。

「何でしょう、議長」
「共同占領した場合、帝国が懸念していた現地での軍事衝突だが、君達は本当に兵力を削減する事で防ぐ事が可能だと考えていたのかね?」
トリューニヒトの質問にボロディン本部長とグリーンヒル総参謀長が顔を見合わせた。

「正直なところ、そこが不安でした。兵力を削減するぐらいしか手が有りません。レムシャイド伯の言う通りなのです」
ボロディン本部長が答えると続けてグリーンヒル総参謀長が口を開いた。

「不可能で有ったとは思いません。私はむしろ帝国がその可能性を故意に無視したのではないかと考えています」
「待ってくれ、総参謀長。故意に無視したと言うのはどういうことかね?」

「つまり、帝国も我々と同じ事を考えているのではないかと言う事です、レベロ委員長。我々を悪者にしてフェザーンを味方につけようとしている。強大な帝国が弱者の戦略を採ろうとしている……」
「!」

執務室に沈黙が落ちた。グリーンヒル総参謀長の言う通りなら同盟は容易ならざる敵を相手にしている。トリューニヒトが誤ったとは思えない。艦隊を派遣したのは間違いではなかった。

あそこで
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