第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#18
MILLENNIUM QUEENU 〜Grand Cross〜
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半裸のような状態で素肌が露出した薄衣、
全身血に塗れた無惨なる風貌。
しかし、その瞳に宿る気高き光は微塵も翳る事なく、
寧ろ輝きが増している。
視る者に、畏怖と畏敬を否応なく抱かせる、その美しさ。
正に、殉教した聖者の復活、神の奇蹟の顕れ。
「……」
その証拠に、女神が胸に抱く赤子には、
毛筋ほどの傷は疎か一滴の血すら染みていない。
「……!……ッ!」
驚愕の余り声も出ないオルゴン、主の感情が伝播したのか周囲を囲む
暴虐の軍勢も大きく後退った。
そのような中、女神は一切表情を変えず光の階段を昇ってきた。
怒りや憎しみ、そのような負の感情がまるでないのが
より一層の畏れを覚えさせた。
「な……」
やがて、オルゴンの前に立ったエリザベスが
存在しない瞳を真っ直ぐに見つめる。
初めに見せた烈しい感情も今はなくなり、
ただただ純粋な感情が自分を見つめている。
「何、故……」
ようやく絞り出した声は、解答を求めてのものではなかった。
怖ろしいのに背けられない二つの瞳、永劫の無限を回帰するに等しく、
絶叫でも慟哭でも発しなければ頭がどうかなってしまいそうだった。
当然、次の瞬間には憤怒の形相へと変貌した女神が
報復の絶撃を繰り出して来るものと想われた、
オルゴンにとってはそっちの方がマシだった。
しかし、女神の御心は、悉く邪悪な王を裏切る。
「……年端もいかぬ赤子に、酷い事を」
エリザベスは微かに瞳を潤ませ、憐れむようにそう言った。
本当に本当に、悲しみに充ちた、小さな声だった。
「――ッ!」
オルゴンの、胸の裡が張り裂けた、
声の出ない己を、彼は心の底から呪った。
「本当に、人間の事など、何とも想ってないのですね……」
幼子に諭すような優しい声、しかしソレが絶大な恐怖感を更に膨張させ
オルゴンの存在をズタズタに引き千切る。
(な、何を……! この女は……一体……何を言っている……!?)
先刻まではあれほど甘美なる響きを以て聞こえていた蜜なる声が、
今は死ぬ事も出来ずにのたうちまわる魔薬へと変質した。
本当に本当に、何を言っているのか解らない、
卑劣な手を使われて、殺されるほどの目に遭って、
どうしてこの女は “オレを憐れんでいる!?”
「本当に、可哀想な徒」
「う、うわああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!」
生前でも、これから先も決して出ないであろう
絶叫がオルゴンの全身から噴出した。
防衛本能に促され、ヘクトル上のラハイアが矢の嵐を全方位から射出する。
しかしソレは女神の躰に、赤子の産着に触れた瞬間ウソのように
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