暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
迷子は迷子と気付かない
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少女は少年から受け取ったたこ焼きを嬉しそうに見ながら続けた。

「あの人はいっぱいいっぱい傷ついて、手の中のものを守れなかったばかりか、それをすくっていた両手もボロボロになっちゃってるの。もう目も耳も塞いでうずくまって、何も知らない《フリ》をしないとやってられないぐらいに」

「……………………」

「だからマイは、あの人の《居場所》になってあげるの。いつでも帰ってこれる安全地帯。力を振るえる理由にね。でも勘違いしないでほしいけど、それはレンが望んだこと以上に、マイが望んでそうしてるんだよ。マイはいつだって、あの人の所有物(もの)なんだから」

満足そうにたこ焼きを頬張り、その熱さに目を白黒させている少女は、おそらく全てを説明する気はないのだろう。

「あの《願い》はそういう意味では指針になったのかもしれないけど、でもそれをいつまでも守り続けてるのレンはやっぱり異常だし、アレはもう《呪い》といってもいいと思うんだ。まぁ、その結果として救われたマイがそのことについてとやかく言うのはお門違いだとは思うんだけどね」

ぷす、と新たなたこ焼きを爪楊枝の先に刺す少女は言葉を紡ぐ。

誰に届けるまでもない、独白のような言葉を吐く。

「『人を助けるのに理由はいらない』……レンはいつもそう言って誰もかれも助けるんだけど、理由なく人を助けるのは怖いことじゃないのかな……ある意味それって、理由なしにお店の商品を差し出してくるような不気味さがあると思うんだよ」

そこでなぜか少女はこちらを見たが、少年が首を傾げると溜め息だけついてたこ焼きを口に放り込む。

「……他の見方で言えば、レンは好意で人を助けてるんじゃない。あくまであの女の人の《願い》を聞いた結果――――使命感で助けてる」

だから彼は、助けた対象に好意は向けない。

だから彼は、人を助け続ける。

あの《呪い》が絡まる前、まだ彼が恐れられていた頃。荒れ狂い、暴れまわる暴君には善悪問わず敵が多い。だが、人助けする暴君の前に立ちはだかる者は総じて、自動的に悪となるだろう。

あの少年が呪われたのは、本当に偶然だったのだろうか。

あの少年自身が何か、善悪を判断する絶対の基準――――決して揺るがない天秤を己の中に見出したかっただけではなかったのか。

「レンは――――レンホウは……本当に小日向蓮なのかな……」

最後の最後。

雑踏の中に消え入るような呟きは聞こえなかったが、それを言った少女は済むことは済ませたとばかりに空の容器を突っ返してきた。

「何だ?もう行くのか?」

「うん。これ以上一緒にいたら《汚染》しちゃうから」

「??」

謎の言葉とともに少女は駆けだす。

「あ、おい!()()()|大《・
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