暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
迷子は迷子と気付かない
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今にもじゅるりという音が聞こえてきそうな眼に少年はいささか引いたが、鉄板上のたこ焼きは現在進行形で完成に近づいているので手を休めることはできない。

咄嗟に彼は商売用のスマイルを顔面に張り付け、話しかける。

「らっしゃい、一ついるかい?」

「……むー、お腹が空いたけどパフェの前にたこ焼きを食べるというのはいかがなものかとさすがのマイでも分かるんだよ。でも肝心のパフェのお店はどこにあるのか全然分かんないし、何よりたこ焼きのいい感じの匂いがすきっ腹を刺激してじゅるもう限界何をじゅる言いたいかとじゅる言えばお腹空いたお腹空いたお腹空いた…………」

猛然と何かブツブツ言っていた。

剥き出しの食欲にウンディーネの少年はうわぁ、と思う。

―――とりあえず腹減ってるのはすげぇ伝わってくるんだが、どうしたもんかな。無闇にあげる訳にもいかないんだよなぁ……。

一個二個ぐらいなら無償であげても商売上そんなに問題ない。本当の問題は、それを目撃した他の誰かが「俺も俺も」とよってたかるのが問題なのだ。

そんなことを考えていたたこ焼き少年を見上げ、真っ白な少女はことりと首を傾けた。

「欲しい、ちょーだい」

「ずいぶんと直球だなオイ」

アイスピックのような道具で生地を裏返し切った彼は、その焼き目に満足そうな表情を浮かべ、青のりやら特製ソースとマヨネーズをその上に振りかける。まだカツオ節の代わりを見つけていないが、これが一応彼が出す商品だ。

鼻を鳴らす少年は、新たに焼くために生地が入ったボウルに手を伸ばしながら口を開く。もはや眼前の少女については客としては扱わない方向性で行くようだ。

種族的な特性として青色の髪を、客の食欲を削ぐからという理由でわざわざ赤に染めたウンディーネの少年は、後ろ髪を掻きながらぼやくように口を開く。

「連れにでも金貰ってから来いよ」

「そんなこと言ったって、レン今いないんだよ。カグラも置いて来ちゃったし」

こんなヤツに財布扱いされている保護者もよっぽどだな、と思いながら少年は生地を再び鉄板のくぼみに流し込み始める。

別に会話を続けたかった訳でもないのに返答を返した彼に気を良くしたのか、真っ白な少女の口はヘリウムより軽くなる。

「もーアレは何なんだろうね。別に今立ってる場所が嫌いってワケでも。これから向かう場所が特別好きってワケでもないのにさ。ふらふらふらふら〜ってどっかに行っちゃうの。たぶん鎖で繋いでも、全部ブッた切って飛び出していくんだよ」

ふーん、と適当な相槌を返す少年は、あらかじめ山のように用意していたパックに完成したたこ焼きを詰める。

「なんか理由でもあるのか?」

「……弱いんだよ」

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