闇-ダークネス-part2/血塗られた記憶
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ていた。…一部の女子からはイケメンフタッフが来たと密かに話題になっていたが、当の本人は知らない。知ったところでどうでもよいと考えるだろうが…。
「ふふ、だろうね」
感情表現に関してはかなり不器用なシュウのことだ。子供たちと接すること事態、大学生レベルの問題を解くこと以上の苦戦を強いられると思った愛梨は笑った。
「悪かったな」
「「うお!?」」
…いつの間にか後ろにいた本人に聞かれてしまったが。
他にもこんなことがあった。
「愛梨ちゃん、今度追試なんだよ…だからお願い!勉強手伝って!」
遊園地内の公園の掃除中、同じバイト仲間の尾白が突然シュウと愛梨の前で懇願してきた。
「また?尾白君、これで何度目?留年しちゃうよ?」
「わかってる!わかってるんだけど…お願いします!」
必死に土下座まで下の見込む尾白。しかし、話を聞きつけた憐が割り込んできて口を挟んできた。
「尾白、実は追試の勉強にかこつけて愛梨と仲良くやろうとしてるだろ?」
「な…!?そ、そんなわけないだろ!」
「あっやし〜。この前だって女の子にナンパしまくってたのに。見事に玉砕したけど」
口では否定こそしているが、憐は一度ならず何度も尾白がナンパをしてはその数だけ失敗を繰り返してきたことを知っている。最初は面白くて数えていたほどだが、もう数えるのも面倒になってきたほどだ。
「人聞きの悪いことを言うな!そして玉砕言うなぁ!!」
彼女がいない寂しさを痛感してか、尾白が男の魂の叫びを上げる。しまいにはうずくまって男泣きをかまし、憐は必死になって彼をなだめたのだった。
ふと、シュウは箒で木の葉を掃いていると、その目に遊園地の花壇に植えられた花を見た。
「掃除をしたからか、花もだいぶ綺麗に見えるな」
「そうね」
愛梨も同意し、花壇の花がよく見えるように身をかがめた。
「その花、好きなのか?」
「うん、私ね…この花が好きなんだ」
彼女が指をさした花、それは紫色で細い花びらを咲かせた花だった。
「この花の名前、知ってる?」
「いや…」
シュウは花には詳しくなかったから答えられない。
「紫苑って言うの。花言葉は、『あなたを忘れない』」
感慨にふけるように彼女は言った。
「この遊園地で作った思い出を、忘れないでほしいって願いをこめて植えられたんだ」
「楽しい思い出は何時までも、か…」
そうだな…思い出は楽しいもので溢れさせたいものだ。この花たちにその記憶を刻みつけて…。
「でも、何より忘れたくない思い出があるの」
すると、愛梨は右からシュウの手を握り、そっと自分の頭を乗せてくる。「お、おい…」と緊張の声を漏らすシュウに対し、少し顔を赤らめながらも笑顔で彼女は言った。
「こうして、あなたと二人でいる思い出」
「………」
気恥ずかしい、と思った。でも…
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