帰郷-リターンマイカントゥリー-part8/断ち切れない家族
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吸を置いてから、公爵はルイズのことについてアンリエッタがどうするのかを尋ねた。
「陛下の我が娘への待遇は、公爵として大変光栄で名誉だとは思っております。ですが…ルイズは火矢の類ではありませぬ。もし、陛下自身がわが娘を、己の都合の良い何かに捉えておいでだというのなら…」
公爵がそこまで言いかけたところで、アニエスは警戒心を高め、剣の柄に手を添えた。一瞬で公爵の目を見て理解した。この公爵…娘を守るためならば、国との長年の歴史を捨て、国に反旗を翻す覚悟を持っていたのだ。
「ッ!」
「アニエス、父様!?」
一触即発になりかける空気に、サイトとルイズは驚愕した。
「アニエス。よいのです」
アンリエッタはアニエスに剣を下すように命じ、アニエスはまだ警戒心を放ちながらも、素直に剣を鞘に収めた。
公爵はさらに続ける。
「…陛下、強大な力というものは人であろうとそうでなかろうと、その力の主を狂わせます。私は、たとえ相手から無礼と謗られようとも、主のお間違いを指摘するのもまた臣下としての忠義と心得ております。
陛下がルイズを傍らに置くのは、あらゆる邪悪な者たちから守るためであると理解しましたが…私は一つ不安に思うことがございます。
陛下が、逆に自ら抱え込んだその力の誘惑に敗北し、お間違いをなさらぬか…」
『この人…』
『あぁ、…父親の、鑑って奴かもな』
一方でサイトは、今の公爵の言葉に感動を覚えた。娘の意見を無視してでも婚約者を押し付けた姿勢とか、やらかしてしまったことも確かにあるだろうが、それらもすべて彼なりに娘の未来を強く思っているが故だった。
羨ましい、とも思った。
小学生だった頃、彼は新しい消しゴムを買うために文具店に立ち寄った時の事。行きつけの店の消しゴムが売り切れていて、やむなく通学路外の店によって新しい消しゴムを購入したのを、クラスメートの誰かに告げ口されたことがある。通学路外に行ったことを咎められ、サイトは本当のことを正直に話して弁解したが、信じてもらえなかった。だが、今は亡き父と母だけは信じて、先生に抗議を入れた。その時の両親の温かさによく似ていた。
力が人を狂わせる恐ろしさも知っている。ゼロも、かつて若さゆえに己の力を過信し、光の国のプラズマスパークコアの力をものにしてしまおうとしたこともあったから、公爵の言葉が身に染みるのを覚えた。
また、サイトはそんな実の父親をすでに亡くし、ゼロは父親の存命こそ明かされたものの、それはごく最近で肝心の父との時間はまるでとれていない。
『親って、いいもんだよな…』
『…あぁ。そうだな』
ルイズの発言から、彼女のことを認めていないと思っていた。でも、違う。そういうことじゃないのだ。この家族は、世界中のだれよりも、宇宙のどんな奴らよりも、虚無とか公爵家という身分以前に、この世でただ一人
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