3.捕虜じゃないよ 〜電〜
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艦娘用のベッドでは艤装をつけた集積地棲姫の身体を寝かせるには横幅が足りなかったため、急遽ベッドを二つ並べて彼女を寝かせていた。人間用医療器具のピッピッというビープ音だけが医務室に鳴り響いていていた。
「……」
「とりあえず一安心なのです……」
私は入渠を後回しにして、彼女が目を覚ますまでの間一緒にいようと決心した。どのような状況であれ、自分が目を覚ました時に周囲に誰もいないというのは心細い。それが見慣れぬ場であればなおさらだ。ならばたとえ面識のない私であっても、一緒にいたほうが心強いのではないか……彼女が敵だということも忘れ、私は彼女が心細くならないようベッドの脇にパイプ椅子を準備して、彼女が目覚めるまでは見守ろうと決心した。
集積地棲姫は私達が運んでいる間、ずっと意識を失っていた。おかげで暴れることもなく、治療もすんなりと出来た。ただ艤装だけは深海棲艦のそれがどういったものなのかいまいちわからず、それだけは彼女の身体に今も装着している状態だけれど。
艦娘ではないから高速修復材が使えるかどうかもわからず、それ以前に入渠で傷が癒えるかどうかもわからない。もっというと、今やっている治療にしても深海棲艦に効果があるかどうかも分からない。何もかもが手探りの状況の中で、ベッドに寝かせた彼女の胸が呼吸で上下していたのを確認したときは、私の胸に大きな安心が訪れた。
今、集積地棲姫は包帯を体中にぐるぐるに巻いている状況だ。チャームポイントだと思われるメガネも外して枕元に置いてある。戦闘の時は私たちに向けた敵意の為に歪んでいた彼女の表情も、今は眠っているためとても穏やかで優しい。
「とっても綺麗な人なのです……」
眺めていると、なんだかつんつんしたくなってくるほっぺただ。いけないことだけど、少しだけなら……そう思い、好奇心に負けて集積地棲姫の真っ白いほっぺたをつんつんとつついてみる。私たち艦娘や人間と変わらない、すべすべで肌触りのいい綺麗な肌だ。
「ん……」
いけない。なんだかずっとつんつんしていたい。私は彼女の眉間にシワが寄っていることにも気づかず、集積地棲姫のほっぺたをつんつんといわず次第にむにむにしはじめていた。
「なにやっとるんだ?」
体中の血液が逆流した。ビクッと波打った私の身体が硬直し、額に冷や汗がにじみ出てくる。ガチガチに固まった首でなんとか振り返ってみると、そこには司令官さんがいた。なんだか不思議そうに私の事を眺めていた。
「し、司令官さん……」
「お客さんは起きたのか?」
「い、いやあの……」
「ほっぺたつついてたよな今?」
言えない……『あまりに普通の人と同じで綺麗な肌だったからつっつきたくなった』だなんて恥ずかしくて言えない……
「べ、別になにも
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