3.捕虜じゃないよ 〜電〜
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もりはないから」
「……分かった」
「んじゃ二人ともお風呂入っといで。俺は執務室に帰るわ。電、今晩だけは鍵忘れないでよ?」
「はいなのです」
「んじゃおやすみー……」
さっきまでの集積地さんに負けず劣らずのうつろな眼差しになった司令官さんは、枕元にある集積地さんのメガネを手に取り、眠そうにあくびをした後左手をダランと挙げて医務室を出て行った。ドアを開けた途端に、
「お勤めご苦労さん」
『なんでバレたクマ?』
という会話が廊下から聞こえ、その会話が最後まで聞こえることなくドアが閉じられた。医務室には、私と集積地さんが残された。
「じ、じゃあ集積地さん」
「……」
「一緒に入渠しに行くのです」
「……やだっ」
「そ、そんなこと言ってたら傷が治らないのです」
「つーん……」
困った……集積地さんが私の言うことを聞いてくれない。
「ほら、一緒に行くのです」
「つーん……」
「わがまま言ってたらダメなのです」
「ぷーい……」
集積地さんはいちいち口で『つーん』『ぷーい』と言いながら私にわがままを言って困らせてきた。こうやってわがままを言ってくれるってことは、さっきよりは打ち解けることが出来た証拠なのかもしれないけれど……でも困った。このままでは彼女の傷を治療することが出来ない。
しかも。わがままを言って困らせてくるくせに……
「じーっ……」
「……?」
「ぷいっ」
「……うう」
私が困り果ててもじもじしてたらこっちのことをじーっと見つめてくる。で、私がそれに気付いて集積地さんの方を見るとそっぽを向く。なんなんだこの人は。
もうこうなったらやけくそだ。
「じ、じゃあ集積地さんっ!」
「……」
「どっちがいいか選ぶのですっ!」
「……」
「もしこのまま入渠してくれなかったら、電はこのまま集積地さんの頭から、だばーっと高速修復剤をぶっかけちゃうのですっ!」
「……!?」
「そして今晩一晩は、高速修復剤でビショビショになったベッドで気持ちわるーい思いをしながら寝ることになるのですっ!」
「そ……それはイヤだ……」
「体中がビショビショに濡れちゃうから、寝てるうちに風邪をひいて明日から鼻づまりに苦しめられることになるのですっ!」
「うう……鼻づまりは辛いな……息苦しくて眠れないもんな……」
あ、いい感じに反応してくれた。この調子で説得したら入渠してくれそうだ。困り顔でうっすら目に涙を浮かべている今なら、説得に応じて入渠してくれるはずだ。
「でも入渠したら傷も痛くなくなるし、身体もさっぱりさらさら。心地いいベッドのシーツにつつまれて、ふかふかで気持ちよく熟睡できるのです」
「ク……ッ!」
「そして! お風呂上がりには司令官さんが
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