3.捕虜じゃないよ 〜電〜
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棲姫と一緒に入渠しろ。もったいない気もするが、なんなら高速修復剤を使ってしまってかまわん。傷が癒えたら今日はそのまま寝ちゃえ。詳しい話は明日だ」
「はいなのです」
「そんなわけで集積地棲姫。今日は電の言うことをよく聞いて、いい子でいるように」
「私への尋問は明日か……捕虜の扱いにしては随分と厚遇じゃないか」
「……だそうだが。電、お客さんに説明を」
司令官さんはそういい、私の肩をぽんと叩いてくれた。よかった。司令官さんは私の葛藤に気付いていたのか。私は今、目の前ですべてを諦めたうつろな眼差しで天井を見つめる集積地さんに、私がどういうつもりで彼女をここに連れてきたのかを説明した。
「はいなのです。集積地さんは捕虜ではないのです」
「捕虜ではないのか……なら私は何だ?」
「とりあえずはお客さんなのです」
「お客さんか……敵に対してつくづく高待遇だな」
「だから入渠して傷を癒やしたら、今日はそのままおやすみするのです」
「だそうだ。とりあえずこの部屋の鍵はさせてもらうが今晩だけだ。後、お前さんの世話は電が責任をもって行う」
「はいなのです」
これで一応、彼女に必要な説明はすべて終わった。あとは彼女が……集積地さんが納得してくれればいいんだけど……でも難しそうだ。うつろな目は変わらず、私たちからぷいっとそっぽを向いて全然私達の方を見てくれない。
「……んーとさ」
司令官さんが自分の頭をポリポリとかきながら困ったような声をあげた。相変わらずこの人の声色は冗談なのか本気なのか判断しづらい。
「もうちょっと愛想よくしてちょうだいよ。仮にも電はお前さんの命の恩人だよ?」
「誰も助けてくれなんて言ってないっ。そっちが勝手に助けて命の恩人だなんて恩着せがましく言われても困るっ」
「そうかい。まぁいいけどさ。とにかく電と一緒に入渠しちゃって」
「入渠中、私がその駆逐艦を人質に取るかもしれんぞ?」
「その点は心配いらん。なんせ頼んでもないのにお前を監視しているやつがいるからな。なぁ青葉?」
――ギクッ!?
気のせいか天井から冷や汗が滴り落ちる感覚を覚えた。……まさか青葉さんが天井裏からずっと私たちのことを観察してたのだろうか。
「ほぉ……」
「それに……口に出さないだけで電のことが心配で仕方がない軽巡洋艦がいつの間にか入り口で見張ってるし。なぁ球磨?」
――クマッ!?
今度はドアの向こう側からガタンという音が聞こえてくる。どうやら私たちはずっと球磨さんと青葉さんに見守られていたようだ。まったく気が付かなかった……。
「要は監視つきということだな」
「そういうこと。イヤだろうけど、立場上仕方ないと思ってちょうだい。それさえ我慢してくれれば、こちらも妙に事を荒立てたりするつ
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