3.捕虜じゃないよ 〜電〜
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い。その時は、私が司令官さんを守って彼女を拘束しなければならない。そんなことを考えながら彼女を見守る。もぞもぞと動いた彼女は、薄目のまま周囲の様子を確認しているようだった。
「ここは……?」
静かに響いた集積地棲姫の声。戦闘時のような雄々しい声ではない。高すぎず低すぎない、とても綺麗で耳触りのいい心地いい声だ。
「目が覚めたのです?」
「どこだ……ここは……」
「ここは電たちの鎮守府なのです」
「お前は……さっき、私と戦闘になった……」
「電です」
彼女の瞳がこちらをちらっと一瞥し、その後首をゆっくりと動かして顔をこちらに向けた。戦闘中はまったく気が付かなかったが、彼女の左目はとても綺麗な水色をしていた。
「……メガネは?」
「はい?」
「私のメガネ。かけていたメガネはどうした?」
「枕元のテーブルに置いてあるのです」
彼女から見て私たちの反対側に置いてある、枕元のテーブルを見る集積地棲姫。そこには彼女のメガネが置いてある。そのメガネをかけたいのか、彼女は右腕を動かそうとするが……まだ傷は痛むようだ。痛そうに顔を歪ませ、メガネをかけるのを諦めたように再び天井を見つめた。
「……運がいいな。怪我だらけでなければ、即座に大暴れしていたところだ」
「……」
「ここはお前たち艦娘と人間の本拠地の一つなんだな?」
「はいなのです」
「私は捕虜か……」
「あの……」
彼女は残念そうに……すべてを諦めたかのような疲れた笑顔を浮かべ天井を見つめた。違う。私はそんなつもりで彼女をここに連れてきたのではない。私は彼女をひとりぼっちにしておけなくて……傷だらけのままあの海域にひとりぼっちにしておけなくて、ここに連れてきたというのに……。
「寝起きのところ申し訳ないが確認する。お前は深海棲艦の集積地棲姫だな?」
彼女と私の会話を隣で冷静に聞いていた司令官さんが静かに口を挟んだ。いつものような気が抜けた話し方ではないところを見ると、やはり相手が深海棲艦ということもあって、TPOをわきまえた話し方をしようと思ったのだろうか。
「そうだ。……お前は?」
「この鎮守府の責任者で司令官だ。この鎮守府の運営とこの子達の管理を任されている」
「……そうか。捕虜の私はこれからどうなる? 尋問か? 言っておくが私は重要なことは何も知らないから拷問をしても意味がないぞ」
「あの……」
「それとも別の場所に連れて行かれて慰みものか? お前たちは女の形をしていれば人間以外でもいいのか? 虫酸が走る話だ」
「あの……あの……」
彼女の言葉を聞いていたら悲しくなってきた。私はそんなつもりで彼女を助けたわけではないのに……知らないうちに少しずつ溜まってきた涙を我慢していると、司令官さんが再び口を
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