2.死んだ魚の眼差しの提督 〜赤城〜
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「赤城、入室してよろしいでしょうか?」
帰投した私は皆とともに補給を済ませ入渠して傷を癒やした後、夜を待って提督のいる執務室に足を運んだ。今回の電さんの行動に対して、提督がどう考えているかを問いただすためだ。私の隣には同じく『俺も連れてけ』とイライラを抑えられない天龍さんがいる。
『はいはーい。どなた?』
天龍さんが少々乱暴にやってしまったノックの音がガンガンと鳴り響き、室内から提督のとぼけた声が聞こえてくる。よく見たら、ノックしたドアにヒビが入っていた。
「夜分遅くすみません。赤城です」
「おー。入って入ってー。どうしたの?」
「分かってんだろうが! 電のことだよ!!」
天龍さんがイライラを隠し切れない声でそう怒鳴っていた。彼女は帰投時も艦隊の中でただ一人、自身のいらだちを隠さずに表に出していた。彼女にとって今回の出撃は相当に苦く、悔しい結果だったようだ。
そして私自身も、いらだちや憤慨こそ表に出す程ではなかったが、納得のいかない点があった。
『なんだよ天龍もいるの? かんべんしてよ〜通信でも怒鳴られたんだから』
「うるせえ!! 入るぞコノヤロ〜!」
足で蹴り開けたのではないかと思うほどの大きな『ドバン』という音を立て、私と天龍さんは執務室に入った。提督は隣の大淀さんと一言二言言葉を交わした後、その冴えない顔をこちらに向け、眉間にシワを寄せて困った表情を見せた。いっちょまえに年齢だけは重ねているその中年男性の顔は今、嫌いな食べ物を前にした子供のように幼く歪んでいる。
「もうちょっとドアは静かに開けなさいよ……お前がつけた傷の修繕費もタダじゃないんだよ?」
「うるせえ! ぶん殴られなかっただけありがたいと思いやがれ!」
「あれ? 殴らないでいてくれるの? 昼間の通信じゃあんなに俺を殴りたがってたくせに?」
「殴りてぇ! 殴りてぇよ!! 初期艦の電をあんな腑抜けた艦娘にしやがって!」
提督のとぼけた返答に、天龍さんの怒りがさらに逆撫でされているようだ。いつもの間の抜けた表情の提督に対し、天龍さんは顔を真っ赤にし耳から怒りの水蒸気を吹き出しつつ語気を強めて提督に迫っている。
「赤城も俺に文句を言いに来たの?」
蒸気機関車の汽笛の音を今にも鳴り響かせそうな様子の天龍さんの相手もそこそこに、提督は私の方を見た。
「文句を言うつもりはありませんが……提督の真意を問いただしたいと思いまして」
「人がそのセリフを吐く時って、大体怒ってる時なんだよなぁ……」
眉間にシワを寄せていた提督の困り顔は苦笑いになり、彼は帽子を脱いで頭をポリポリと掻いていた。
「んで? 赤城は何について俺の真意を聞きたいの?」
「今回の電さんの行動に対して、提督は何ら処分を下しま
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