2.死んだ魚の眼差しの提督 〜赤城〜
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ーだろうな……?」
「妙なこととは?」
「“敵であっても命は大切だ”とか“命は地球より重い”とか、戦場ではクソの役にも立たねぇくだらねぇことだッ!!」
彼女はいささか言い過ぎな気もするが、戦場において相手の命を気遣うということは、自分の命を危険にさらすことと同義だ。敵兵の命を助けてしまえば、その敵兵は次は自分を殺しに来るかもしれない。自分の仲間を手にかけるかも知れない。敵味方関係なく命は平等に大切なものだが、自身や味方を危険にさらしてまで敵の命を助けるというのは間違っていると私も思う。
だから今回の電さんの行動に対し、提督が何のアクションを起こさないことに私は納得がいかないのだ。敵ですら救いたいという彼女の優しさは私も大いに評価するが、仲間の命を危険に晒し、鎮守府に連れて帰るという暴挙をしでかした彼女に対し何かしらの処罰を与えなくては示しがつかない。敵の命を助け味方の命を危険に晒す彼女の行為を肯定してしまえば、それは『仲間の命を軽く見ている』という意思表示にほかならなくなってしまう。
天龍さんは天龍さんで、きっと別の意味で電さんが心配なのだ。戦場では『敵の命を助けたい』という甘い考えは通用しない。そのような腑抜けた姿勢で戦っていれば、いつの日か必ず轟沈してしまうだろう。天龍さんは電さんに轟沈して欲しくないのだ。故に、もし電さんの優しさが提督の教育……もっといえば洗脳の賜物であるとするのなら、彼女は提督のことを決して許しはしないだろう。
「……」
「どうなんだよ提督!?」
「えーとな……」
「あ!?」
提督は一度帽子を脱ぎ頭をボリボリと掻いた後、改めて私たちに死んだ魚のような眼差しを向けた。少しだけ眼差しに真剣味が宿っていたのは、私の気のせいではないと信じたい。
「まず天龍。電はこの鎮守府に来てから今日まで、ずっとあんな調子だ」
「は? 意味わかんねー。急に何言い出してんだよ」
「お前は俺が電に妙なことを吹き込んだから、電が今回集積地棲姫をわざわざここまで連れてきたと思ってるみたいだけどな。あれは他の誰でもない、アイツの判断だ。俺は何も言ってないし、何も言うつもりはない」
「……本当か?」
「ホントホント。提督の言うことを信用してよ」
「……チッ」
幾分真剣味がこもった声で提督が天龍にこう説明をしていた。電さんの優しさは提督が教えたものではなく、彼女の本質のようだ。それはそれで素晴らしいことだとは思うが……
「次に赤城」
「はい」
「お前の話の件だが、何を言われようと俺は電に処分を下すつもりはないよ」
「……なぜですか? いつもの無責任ゆえですか?」
やはり提督は電さんの暴挙に対して、お咎め無しの判断を下したようだ。私は提督のこの決断を聞いて、恐らく『まぁ問題にはならん
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