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テキはトモダチ
2.死んだ魚の眼差しの提督 〜赤城〜
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 この後に及んでまだ冗談とも本気とも判断出来ない言葉で提督は私を煙に巻こうとしているのだろうか……

「……言い方を変えます。集積地棲姫の殺害が今回の任務です」
「別に殺害はせんでもいいだろ」
「その殺害目標である集積地棲姫を、電さんは連れて帰ってきたんですよ? 立派な命令違反では?」
「仮にそうだとしても、電を処罰したりはせんよ?」
「他の者に示しが付きません。初期艦の電を大切に扱うのは結構ですが、えこひいきをされては艦隊の士気に関わりますよ?」
「あら。ヤキモチ焼いてるの?」
「いえ。かなり真面目な話です」
「ふむ……」

 少しだけ語気を強めてみたのが功を奏したのか、提督の顔がスッと少しだけ神妙な顔つきになった。死んだ魚のような濁りきった両目はそのままだが。

「天龍」
「あン?」

 提督は、私の隣でイライラを抑えきれず先程から私の隣で身体を揺らしている天龍に声をかけた。これも私の追求を躱すためなのだろうか。彼と話をしているとそういうことばかりを考えてしまう。彼は私たちの上官。信頼しなければならない人物だというのに……

「お前さんも俺に文句を言いに来たの?」
「当たり前だ!! 俺達艦娘ってのは深海棲艦と戦うための存在だ! なのに電は普段から敵にトドメをさすのも嫌がる上に、今回は相手の大将の命を助けてあまつさえ鎮守府に招き入れやがったんだぞ!!」
「うん?」
「この鎮守府はまだ設立されて間もない! お前も提督になったばっかで艦隊指揮に不慣れなのかもしれねえ! でもよ! うちぐらいだぞ未だに戦果ゼロの鎮守府なんて!!」
「そらぁ確かに俺は艦隊指揮は下手で申し訳ないけど、よそはよそ、うちはうちでしょうが」
「なに子供に“隣のシュウくんちはお小遣いが月5000円なんだって!!”て言われた時の母ちゃんみたいなセリフ吐いてんだよッ!!」
「お前こそなんだよその的確な喩え話は……」

 以前に提督と同期で従軍した人が率いる他の鎮守府と演習をしたことがあったが、その鎮守府はかなりの戦果を挙げていると聞いた。その練度は凄まじく、演習で私たちが完膚なきまで叩きのめされたのは記憶に新しい。その時の天龍さんは実に悔しそうだったことを私はよく覚えている。

 彼女はうちの面子の中でも好戦的な方だ。そして自分の実力やこの鎮守府に自信を持っている。それなのに他の鎮守府の子たちにまったく歯が立たなかったことが、よほど悔しく、そして自分たちの実力不足がとても歯がゆいらしい。

「……電は初期艦だったんだよな?」
「そうよ? 今更んなこと言わんでも分かってるでしょ?」
「初期艦ってことは、しばらくは二人で鎮守府運営してたんだよなぁ?」
「大淀もいたから二人じゃないなぁ……」
「てめー……電に妙なことを吹き込んでね
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