2.死んだ魚の眼差しの提督 〜赤城〜
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せんでした」
「だねぇ」
「ハッキリ言わせていただきますと、電さんの行動は利敵行為に該当すると思います。軍法会議モノの事態ではないですか?」
「んな大げさな……敵兵を一人救助して連れ帰っただけでしょうが……」
「それを利敵行為と言うんです。しかも連れ帰ったのは作戦目標の一人である集積地棲姫ですよ?」
「だねぇ」
今回の任務で、電さんは作戦目標の集積地棲姫を鎮守府に連れて帰った。『あの人を助けるのです』と彼女が言った時、私や天龍、皆がそれぞれ大反対した。
だが電さんは……
――あのまま手当もされずにあそこにいたら死んでしまうのです
そういい、一人で小島に戻り虫の息の集積地棲姫をたった一人でおぶって運んできた。私たちの反対を押し切った手前、集積地棲姫を運ぶのに皆の手を借りることは出来ないと思ったのだろう。そういう点は真面目な彼女らしい。常日頃の戦いでも、敵にとどめを刺すことを極端に嫌がり、敵を撃沈せずに戦闘を終了させることが多い、優しい彼女らしい行動だ。
だが今回は訳が違う。今回電さんは、敵勢力の最重要人物の一人にして今回の作戦目的である集積地棲姫の命を助け、あろうことか鎮守府に連れてきた。これはある意味では暴挙とも言える行いだ。今までは敵を殺さずに追い払う彼女の優しさを評価していた私だったが、今回ばかりは流石に私も頭を抱えた。
「今回のような利敵行為を働いた電さんに対し、何かしらの処罰が与えられるものだと私は思っていました」
「うん」
「ところが提督は電さんを処罰するどころか……」
思い出すだけで力が抜ける。集積地棲姫を連れて帰ってきたという暴挙をやらかした電さんに対し、出迎えた提督はいつもの調子でこう言い放った。
――ほい。任務遂行おつかれさん。お前さんたちは早く傷を癒やしなさいよ。
お客さんは医務室に連れてってくれ。準備はできてるよ。
提督はいつも覇気がなさそうに見える。死んだ魚のような眼差しで私たちの報告を受け取り、艦娘の失敗を責めず……かといって手柄も褒めず……私たちとの会話もいまいち本心で話をしていないような、そんな印象を受ける。何かを相談しても……戦術の相談をしても今後の鎮守府の方針を具申しても、決まって最後は『いいんじゃない? 知らんけど』という無責任な一言で締めくくる。
本人曰く、初老に片足を突っ込んだ40近い年齢らしいが……悪い意味でとてもそうは見えない。……いや、顔つきや雰囲気からはなんとなく年相応な雰囲気を感じ取れるが、その妙齢の人間にあるはずの格が、この提督には感じられない。
「電さんはお咎め無しですか?」
「ないなぁ」
「提督、今回の作戦目標は集積地棲姫の調査と無力化です。捕縛ではありません」
「無力化はしとるだろ。ある意味」
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