1.標的は陸上型 〜電〜
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電さん?」
「は、はい! 艦隊、すみやかに現海域から離脱して鎮守府に帰投するのです!」
「了解!」
「了解しました!」
「……了解クマアアッ!」
「了解だこんちくしょうッ!」
みんなが各々私の撤退命令に対して応答してくれた。赤城さんと鳳翔さん、青葉さんはいつもと同じだったが、球磨さんと天龍さんの返事には怒気がこもっていたのが分かった。
改めて集積地棲姫を見る。血まみれで焼け焦げた艤装を身に纏った集積地棲姫は私達を睨み続けていたが、やがて力尽きたようにグシャリとその場にうつ伏せに倒れた。地面に倒れ伏し、私たちの方を見る体力もなくかろうじて呼吸をしているのが、静かに上下する彼女の背中から分かった。
倒しきる事は出来なかったが、撤退する私たちを背後から攻撃することはないだろう。私たちは踵を返し、集積地棲姫によって資材が収集されていた小島をあとにすることにした。
「……」
「……」
天龍さんの顔を見た。体中をプルプルと震わせ、全身から怒気が漏れ出しているのが分かる。バリバリという歯が砕ける音が聞こえてきそうなほどに食いしばっていた。天龍さんは基本的に優しい人だ。自身がどのような窮地に立たされても周囲への気遣いを忘れない人だ。私たちに当たり散らすということはしないだろうが、あそこまで不快な感情を表に出す天龍さんは初めて見た。
同じく球磨さんの顔を見る。
「……クマ?」
球磨さんの表情はいつもののほほんとした顔ではあるが、よく見るとアホ毛がピクピクと動いていた。球磨さんはいつも当たりの柔らかい表情をしているが、性格はどちらかというと好戦的だ。表には出してないだけで、今回はさすがに悔しいらしい。
「電さん?」
「はい?」
「大丈夫。みんな分かってます。あなたの判断は正しい」
「あ、ありがとうなのです……」
「ただ、みんな悔しいだけなんです。だから大丈夫。胸を張って」
「はいなのです」
天龍さんと球磨さんの顔色を伺っていたのがバレたのだろうか。赤城さんが私にフォローを入れてくれた。そのことは素直にうれしいのだが……私には他に気になることがあった。
「赤城さん、周囲の様子はどうです? 敵艦隊はいるのです?」
「周囲の索敵ですか? 少し待ってくださいね」
私が気になっていること。それは周囲の海域に深海棲艦がいるかどうかだった。それは決して私たちが安全に帰投できるかどうかゆえのことではない。
「私は何も見つけられないですね……鳳翔さん! 周囲はどうですか?」
「彩雲からは何も。周囲には何もいないと見ていいはずです」
「青葉の偵察機も何も見つけられませんよ」
青葉さんの『敵は見つからない』はちょっと不安が残るが……赤城さんだけでなく、鳳翔さんが偵察機を飛
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