プロローグU
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ってもらえるとありがたいよ」
入寮時からうすうす気づいていたが、やはり佐久間は第十三期入学生のうち、最年少だった。
自分の居場所がなくなることを予見していたものの、どうにかことが上手く運ばれた。自分のすぐそばで笑顔を見せてくれる彼の存在のおかげで、佐久間の心は数週間前に比べればやや、落ち着いていられる。
「そう言えば、昨日先輩から聞いたんだけどよ。新入生でも容赦なくペア組みとか実戦指揮とかやるらしいぜ」
「へえ、そうなんだ」
遠くのステージで自らの出生を語る生徒をぼんやり見つめながら呟く。
入学時点で勝ち組確定……全国的にも知名度があるこの幹部育成科は、確かに卒業できればエリートとして扱われるのは間違いない。
だが現実はそう甘くはない。幹部候補生としての知識力、指揮能力が学園の目標に達成できなければ、いつまで経っても卒業することは不可能だ。過去にはついに卒業できず、自主退学してしまった生徒もいると聞いていた。
プレッシャーはそれだけに留まらない。この科の生徒は、実際に司令部から戦闘員《メタフィジスター》――通称「魔法使い」の命を預かる立ち位置でもあるのだ。
「こっちは命の危険のないところでああやれ、こうやれって女の子たちに指示する訳だろ? ……上手く言えないが、何となく申し訳ねえよな」
こくり、と頷く。佐久間にとっても、その言葉は深く賛同できる。
自分と同じ年齢の女子生徒が、命を落としかねない戦場で闘っている。その様子を傍観しながら、戦術的な知識や感覚を生かし、第三者的な視点から適切な行動を彼女たちへと示す。それこそが、佐久間たち幹部育成科の生徒に課された一つのミッションだ。
「彼女たちをどんな顔で指揮すればいいんだろう……」
ふと漏れた心の中の不安の残滓、それが無意識のうちに声となって現れる。
「もっともだな。噂によれば、陰口叩かれたりもするみたいだぜ」
ぬくぬくとした空間で危険な思いをすることもなく、言いたい放題命令される――特別科の生徒たちの苦心は大変なものだろう。佐久間にとっても、それは容易に想像できる。
『これにて、新入生総勢三十三名の自己紹介が終了いたしました。続きまして、閉幕の言葉を生徒会副会長より行います』
いつの間にやら自己紹介は終わったようだ。進行のアナウンスが耳に届く。
「なんだ、もう終わりか。学園長の言葉とかねえの?」
「学園長は隣でやってる特別科の式に出席してるみたいみたいだよ」
「向こうだけかよ! 俺たちの扱い適当すぎねえか?」
若干その事実に気付くのが遅い気がするが、ツッコミを入れるのも野暮ったい。
「仕方ないよ、規模的に見ても主役は特別科だろうし――あれ?」
唐突に会場全体がざわめき始める。ざわつき方は雑談のそれとは比較にならない。
「何だよ、どうしたっ
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