プロローグT
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テレオタイプがあるのだが、この女の子、どこをどう眺めようと見てくれは普通の子である。
「そうなんですね。ちなみに、今はおいくつで?」
「十二歳。だから今は、この学園の初等部に所属してるんだー」
少女は目を見張った。流石に中学生にも到達していない年齢だとは予想していなかったのだ。
それもそのはず。この学園長は容姿こそ幼げだが、他のところを見れば相応でない大人っぽさを見せていた。
二日前、少女は入寮のために学園へと連絡を取った。電話越しの相手はやはり学園長であり、その電話応対から察するに最低でも中学生以上だと思っていたのだが――その予想はものの見事に打ち破られた訳だ。
自分のことを幼いと考えているのではないが、こんな小さな子よりも己の方がどうも稚拙なように思われ、齢十六の少女は恥ずかしそうに目線を落とした。
ふと唐突な地響きが、足元の石畳のつなぎ目を無意味に追っていた少女の視界をぶれさせた。ひゃっ、と少女は甲高い悲鳴に似た声を上げる。
「そろそろ大門を開くように伝えてあったんだ。ちょっとうるさいけど、我慢してね」
開き切るのに一分と掛からなかった。
急に目の前に現れたその空間は――少なくとも少女にとって、先ほど覗き見ていたその場所とは、まるで別世界のようである。
完全に障壁が取り除かれた今でさえ、その全景は視野に収まることがなかった。
「本当に街みたい……」
「『湯堂院学園』はいわば一つの街だからね。幅広い人間が幅広い年齢層で集まってくる。全寮制だから、みんなここに住んでいるんだ。ざっと数千人」
「数千人……」
数学に疎い少女は、その規模の大きさを正確には思い浮かべられなかった。
まるでファンタジーワールドの入り口に突っ立っているような、不思議な感覚。一歩を踏み出そうにも、何故か夢と現実の狭間にいるように感じられて、身体がなかなか動かない。
すると学園長はくるりと少女の正面に回り込み、
「ようこそ、新入生の柊なのかさん! 今日から始まる『湯堂院学園』での学園生活、しがない学園長ではあるけど精一杯応援するよ! さあ……」
学園長はそんな演出をやってみせて、その小さな手を伸べた。
少女はその色白い右手さえも怪訝そうに見つめていたが。
……やがてその実在を確認するように、恐る恐るその手を取る。
そしてその瞬間――手を取り合った両者は、互いにその茶番じみた行為が可笑しくなって、ついつい吹き出した。それに伴って、学園長も目を細めてみせる。
「はい、よろしくお願いしますっ!」
――期待と希望を込めて、少女はその前足を、新たな世界へと踏み入れた。
少女がたどり着いたこの場所は、幻想によって作られたファンタジーワールドに近しいものであることは、確かに違いなかった。
異能者《ネイチャー》と呼称さ
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